研究課題/領域番号 |
21K00942
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
水野 祥子 駒澤大学, 経済学部, 教授 (40372601)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 開発 / 環境 / 国際援助 / 植民地科学 / ネットワーク / イギリス帝国 |
研究実績の概要 |
本研究では、世界最大の自然保護ネットワークを形成する国際的NGOである国際自然保護連合(IUCN)に注目する。1950~60年代にかけてのIUCNにおける科学者ネットワークを検証したところ、アフリカ開発のための領土横断的な協力と分野横断的な研究の促進を目的としたサハラ以南アフリカ科学会議(CSA)のメンバーがIUCNの執行委員会に名前を連ねるようになったことが明らかになった。もともと自然保護の対象が欧米中心であったIUCNが、1956年の総会からアフリカの脱植民地化が自然資源の開発と保全に及ぼす影響を議題に挙げ、1960年に国際連合教育科学文化機関(UNESCO)と合同でアフリカ特別プロジェクトを開始したのは、E・B・ワージントンらアフリカ植民地開発に携わった科学者の影響が大きいと考えられる。 アフリカ特別プロジェクトは、イギリス、フランス、ベルギーなどの植民地科学者と、IUCNやUNESCO、国連食糧農業機関(FAO)から派遣されたアメリカの科学者、新興独立国の科学者および政治指導者の間で独立後のアフリカの自然資源をどのように利用し、保全すべきかを話し合う場を提供した。これらのアクターがアフリカの生態環境と現地社会をどのように認識し、いかなる開発・保全のあり方を提唱したかについては、さらなる一次資料の分析が必要である。かれらの議論を通して、植民地科学者が提唱した「エコロジカルな開発(大戦間期に発展した生態学の影響を受け、現地の生態環境と、それを利用してきた社会の調査に基づく開発)」という思想がアフリカ特別プロジェクトに及ぼしたインパクトを検証していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は新型コロナウイルスの世界的まん延により、海外資料調査を断念せざるをえなかった。そのため、IUCNとUNESCO文書館が所蔵する一次資料のうちオンラインで閲覧できるものを中心に分析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
IUCNを起点とする科学者ネットワークを検証するため、IUCNとUNESCO文書館、オクスフォード大学ボドリアン図書館が所蔵する一次資料を分析する。また、アフリカ特別プロジェクトにおける議論の内容を明らかにするために、前述の文書館に加えて、イギリス国立公文書館とFAO文書館の所蔵資料を用いる。なお、新型コロナウイルスの影響により海外調査が困難な場合は、次年度以降に延期する可能性もある。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの世界的まん延により、2021年度に予定していた海外資料調査(スイス、フランス、イギリス)を行うことができなかった。そのため、2022年度の夏季休業期間および冬季休業期間中に当該調査を行う予定である。さらに、イギリス国立公文書館およびFAO文書館(イタリア)所蔵の資料については、春季休業期間中に調査する予定である。
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