研究実績の概要 |
本研究は、メールゼブルク司教ティートマル(975-1018年)の『年代記』(1012~1018年成立)を対象に、知的エリートとしての聖職者層における終末論の高揚、異教的宗教観を色濃く残した、ザクセンのキリスト教的民衆世界、そして隣接するスラヴ人の異教世界、この性格の異なる3者の各々の宗教観・死生観の特徴を実証的に解明することを目的とする。 2021年度、2022年度は、約50箇所に及ぶ死をめぐる様々な題材を選り抜き、キリスト教と異教に大別したうえで、各種の類型化(例えば、幻視、亡霊、生ける死者、悪魔、不可思議な自然現象、吉兆に関する予言、祭祀、等々)を試みた。3年目となる2023年度は、これまでの類型化の作業を元に各類型の特徴の抽出・分析に重点を置いた。すなわち、「キリスト教」、「異教」、「伝説」、そして「自然現象」に大別・数値化し、重要事例についての分析を試みた。 研究期間中に同種の問題意識と方法論に基づくDirk Jaeckel / Lisa Klocke / Matthias Weber (Hrsg.), Thietmar von Merseburg. Historiographie der Grenzwelten. [Studien zur Vormoderne, Band 4], Peter Lang, 2022が刊行され、得るところは大であった。なお、同書については『西洋中世研究』16(2024年末刊行予定)に「新刊紹介」として投稿した。
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