研究課題/領域番号 |
21K00953
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
向井 佑介 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (50452298)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 曹操高陵 / 石牌銘文 / 薄葬 / 神坐(神座) / 墓主図像 |
研究実績の概要 |
本研究は、主に中国南北朝隋唐時代までの墓を対象とし、墓室内の儀礼空間と儀礼行為の実態を、歴史考古学的手法により解明しようとするものである。これにかかわる令和5年度の研究実績は、次のとおりである。 (1)南北朝隋唐時代の墓室内儀礼の源流を解明するため、『儀礼』などの古典文献に記載された喪葬儀礼の次第を整理するとともに、漢代以前の宗廟と墓における霊魂の祭祀のありかたを考察した。その研究成果は、史学研究会例会での口頭発表をふまえて、『史林』第107巻第1号(特集「まつり」)に学術論文として掲載した。 (2)漢代から晋代における墓制の変遷、とりわけ薄葬の流行とその歴史的意義についての研究成果をまとめた英語論文を、東方学会の『ACTA ASIATICA』誌に発表した。これに関連して、河南省安陽市の西高穴2号墓(曹操高陵)出土石牌67点の銘文について検討し、詳細な訳注を作成し、森下章司との共著により『東方学報』京都第98冊に発表した。さらに、第19回京都大学人文科学研究所TOKYO漢籍SEMINAR『清と濁の間――銘文と考古資料が語る曹操とその一族』を企画し、そのなかで「厚葬から薄葬へ――曹操とその一族の墓を掘る」と題する報告をおこなった。 (3)2022年にドイツのヴュルツブルク大学で開催された日独二国間学術交流セミナーでの報告をふまえた論考「漢魏晋墓の神坐と墓主図像」を、京都大学人文科学研究所の共同研究成果報告論文集『「見える」ものや「見えない」ものをあらわす―東アジアの思想・文物・藝術―』に掲載した。 (4)これらの研究に関連した共同研究の成果として、中国の蘭州大学において“馬・車馬・騎馬的考古学:欧亜大陸東部的馬文化”国際学術研討会と題する国際シンポジウムを主催し、南北朝隋唐時代までの墓から出土した壁画や俑についての研究成果を中国語で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで新型コロナウイルスの流行により実施できていなかった中国での現地調査と成果報告を部分的に再開することができ、特に甘粛省・青海省を中心として新たな考古資料の収集と現地調査をおこなうことができた。また、学会・シンポジウムにおいて3件の研究報告をおこない、それをふまえた学術論文4本、訳注1本を刊行するなど、研究成果の公表はきわめて順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、中国における遺跡と遺物の現地調査を再開するとともに、引き続き国内における考古資料と文献史料の集成・分析を継続し、その成果を随時、国内外の学会・シンポジウム報告や学術雑誌論文として公表していく予定である。 (1)令和3~5年度の研究期間を通じて、南北朝隋唐墓の資料集成を進め、中国の学術雑誌や報告書に掲載されている資料を中心として、墓室の空間構造、神坐と葬具、副葬品の組成と配置、壁画の内容と配置などの情報を整理してきた。今年度は、それらの考古学的諸要素と文献史料の記述とがどのように対応するのかを検討し、その研究成果を論文にまとめて、学術雑誌に投稿する。 (2)南北朝隋唐墓の制度的源流を解明するため、これまで漢魏晋墓の分析を重点的におこなってきた。本年度は後漢末の曹操の時代における諸制度の変革に着目し、一連の研究成果を書籍として出版する。 (3)これらに関連する共同研究の成果として、令和6年5月に開催される第68回国際東方学者会議のシンポジウムにおいて「中国北方の騎馬文化―夫餘・鮮卑を中心に―」と題する研究報告を実施する。
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