最終年度である2023年度は、弥生時代の家形土器を中心とする形象遺物に関し、外部機関が所蔵する資料の観察とデータ化を実施した。家形土器の資料調査に関し、熊本県山鹿市方保田東原遺跡、福岡県小郡市横隈上内畑遺跡、静岡県浜松市鳥居松遺跡(第3・5次調査)、神奈川県厚木市子ノ神遺跡を対象に、SfM多視点ステレオ写真測量(SfM-MVS)による三次元データ化を行った。これまでの資料の実見・観察とあわせて(鳥取県湯梨浜町藤津出土、岡山県倉敷市女男岩遺跡、楯築墳丘墓、岡山市雲山鳥打1号墳丘墓)、本研究課題により全国の家形土器の個体を実見することが可能となった。また、形象遺物研究の一環で、岡山県岡山市甫崎天神山遺跡出土の鳥形土製品および百間川原尾島遺跡出土の舟形土製品を対象に、SfM-MVSならびに非破壊のハンドヘルド蛍光X線装置によるデータ取得を実施した。 本研究の中心的資料である岡山大学所蔵の岡山市雲山鳥打1号墳丘墓出土の家形土器について、破片に関する補足の三次元計測を完了した。その後、同資料の破片データ接合について、株式会社シン技術コンサルに委託した。この作業により、実物での作業が困難であったデータ上での破片接合が可能となり、当初の目的である個体復元を行うことが可能となった。また、家形土器の複数の破片を対象にハンドヘルド蛍光X線装置によるデータを取得し、個体識別作業ならびに隣接する立地の甫崎天神山資料との比較研究を行った。 こうした作業をもとに、家形土器の編年と地域的展開、および形象遺物群からみた吉備弥生社会の特質に関し、2023年度末に総合的考察を行った。その成果の一部に関しては、2024年度日本考古学協会第90回総会・研究発表会の場で発表を行うこととした。
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