最終年度である今年度は、大きく次の3つの方向性からなる研究を進めた。第1は、布留遺跡堂垣内地区出土の縄文時代資料の整理。第2は、同遺跡検出の焼成粘土遺構の復原実験。第3は、焼成粘土塊事例の集成と主要資料の観察、検討である。 第1の布留遺跡堂垣内地区縄文時代資料整理は、遺構出土分に引き続き、包含層出土土器のトレース、編集を終え、資料集の体裁を整えることができた。また、主要型式の中から特徴を端的に示す土器を抽出し、鉱物組成による胎土分析を委託業務として実施することで、焼成粘土塊との比較情報を得ることができた。第2の復原実験は、昨年度までの実験結果を受けて条件を絞り込み、追加実験として野外での粘土塊焼成を行った。また、これとあわせ、電気炉での加熱実験を予備的に行うことで、焼成時間と色調の相関を把握することができた。第3の焼成粘土塊資料の観察、検討は、土器製作に強く関連すると推測される資料を中心に実見観察を進めた結果、その共通的特徴から、土器製作各過程において生成される粘土塊の特徴を概ね把握することができた。その一方、第2の実験結果と、第3の土器製作に関連すると考えられる焼成粘土塊の観察から、当初、土器製作にかかる貯蔵素地の失火により形成されたと推測した布留堂垣内地区検出の焼成粘土遺構は、土器製作に関連する遺構である蓋然性が極めて小さくなった。逆にこれに類似した焼成粘土遺構および焼成粘土塊を集成、検討したところ、炉や火処の一種とするのが妥当であると考えられるようになった。 以上、本研究の結果、土器製作に関連する焼成粘土塊の典型的形態を示すことができるようになるとともに、同じ焼成粘土塊とされるもののうちには、炉や火処など、別の機能の場にも同様に、粘土が多用される場合の多々あることが理解されるようになった。
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