研究課題/領域番号 |
21K00967
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館 |
研究代表者 |
志賀 智史 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部博物館科学課, 室長 (90416561)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 赤色顔料 / ベンガラ / 流通 / 九州 / パイプ状粒子 / 不定形粒子 |
研究実績の概要 |
本研究では、九州の墳墓出土ベンガラを対象に粒子形態及び元素・鉱物組成から分類を行い、その時間的、地域的変遷を把握した上で、ベンガラの流通とその背景について検討を行うことを目的とする。 2年度目の令和4年度は、コロナ禍での社会経済活動の再開に伴い、自粛していた館外での調査を年度後半から再開した。 九州南部の調査では、在地系の地下式横穴墓と外来系の古墳の調査から興味深い知見を得た。地下式横穴墓は約50基の調査を行い、鉄細菌素材の直径約1μmのパイプ状粒子を含むベンガラ(以下、P類)の採用が明らかになった。一方、古墳は6基の調査を行い、主体部において鉄鉱石素材と推定される不定形粒子を持つベンガラ(以下、不定形類)の採用が明らかになった。 研究代表者によるこれまでのベンガラの調査から、日本列島全域ではP類の採用が一般的であることから、九州南部の在地系墓制である地下式横穴墓でのP類の採用は汎列島的な現象と考えられる。 一方、外来系の古墳での不定形類の採用は、このベンガラが古墳の築造にあたり特別に準備されたものである可能性を示す。隣接する熊本県の阿蘇では大量の褐鉄鉱が産出し、これを焼成して製造されたベンガラが弥生・古墳時代の特産品であったことが古くから指摘されている。この褐鉄鉱は特徴的な形態を持つ粒子を含んでおらず、不定形類のベンガラの素材になり得る。熊本の古墳でも不定形類のベンガラが採用されており、九州南部の古墳で採用された不定形類についても、阿蘇からもたらされたものである可能性が極めて高いと判断できる。 以上の研究成果は、『鹿児島大学総合研究博物館研究報告19 大隅大崎神領10号墳III』で公表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍による移動の自粛により、十分調査を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は最終年度となるが、新型コロナウイルス感染症が5類感染症へと変更される予定のため、本格的に調査を再開したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品で価格の安価なものを購入したため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、次年度に効果的に使用したい。
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