研究課題/領域番号 |
21K00971
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小柳 美樹 金沢大学, 人間社会研究域, 客員研究員 (40436671)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 考古学 / 中国史 / 農耕史 / 青銅製農具 |
研究実績の概要 |
初年度となる2021年度での研究は主に、1)該当資料集成、2)湿地・干拓地における伝統農具の調査・比較研究、3)記録映像による伝統的な農耕技術の確認を行った。 1)該当資料集成では、地本研究課題となる青銅製農耕具の集成である。特に呉越地域である上海市、浙江省、江蘇省における発掘調査報告書、季刊誌『農業考古』内の報告文献、関係文献などから、青銅製農具である鎌、穂摘具、犂、鋤・耜等の集成を進めた。研究領域の展開を目論み、周辺地域である安徽省、福建省などにも注意を向けながら集成を進めている。集成作業においては、データベース化を行い、図版作成を念頭に整理を進めている。 2)湿地・干拓地における伝統農具の調査・比較研究では、呉越地域に地理環境が類似する日本国内での該当地域において、その地理環境を確認し、伝統農具の在り方について調査を進めた。調査地点は秋田県内大潟地域、長崎県諫早・有明海周辺地域、兵庫県三木であり、博物館・資料館が所蔵する伝統農具を実見した。田畑の土壌環境に即した独特の伝統農具(特に犂、鎌)の存在を改めて確認することができ、簡易実測を行い報告文献において図版化できるように調査を進めた。 3)記録映像による伝統的な農耕技術の確認では、国立民族学博物館(大阪府)で公開しているアーカイブ映像を視聴し、中国、タイなどの稲作技術・作業動作を確認した。同時に展示品での伝統農具の確認も行った。特に穂摘み具による収穫動作、犂耕作の耕耘動作などを確認することができ有益であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度が研究の初年度であるが、本研究課題への達成に向けての基礎的な研究(資料集成、湿地・干拓地における伝統農具の比較研究、映像記録による伝統農耕技術の確認)を進めることができたと考えている。一方で、新型感染症流行の影響で中国に渡航することができなかったため、中国においての調査を実施することができなかったことは本研究進行において大きな影響を与えた。実物資料を手に取って熟覧することはできず、それによる同笵製品の抽出ができない状況にある。渡航できない中で、日本国内でできることを積極的に進めたといえる。渡航はできなかったが、浙江省考古研究所、北京大学所属の中国人研究者とはメールやチャット(メッセージ通信)などでほぼリアルタイムに意見交換ができ、教示を受けることができた。中国に感染流行以前にように平易に渡航することが復活すれば、積極的に最終戦的に現地での資料調査・研究を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
該当資料の集成および型式学的な分類、変遷などの考古学研究を引き続き進め、農耕技術および呉越の領域内での流通構造について実証的に研究を進めていきたい。 中国に平易に渡航することができれば、速やかに渡航し、実物資料の実測、写真撮影を行い、資料相互の比較研究に耐える基礎資料の充実化を図りたい。2022年度においても調査・研究が少なからず制限されると予測できるため、合理的に調査が進行できるように日本国内において余念無く準備を進めたいと考える。機材(写真撮影、3D撮影など)の予行練習なども入念に行いたい。また伝統農具との比較研究を可能とするために、その伝統農具の資料獲得も積極的に調査を進めたい。 日本国内の湿地・干拓地における伝統農具について、また農機具を祭祀品として奉納する儀礼などは、呉越地域の農耕技術を考察していく上で、その比較研究の対象として十分の価値を有しており、引き続き調査・研究を進めたいところである。2022年度では青森県、京都丹波域などでの資料調査を行う予定である。 2021年度内においては、研究成果を年度内に公開することはできなかったが、2022年度以降においては、各研究ブロック毎に現在までの研究ノート、資料紹介的な文章にまとめ、逐次公開することを計画している。公開場所は印刷物だけではなく、ホームページを開設するなどインターネット上での公開も考えている。
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