研究課題/領域番号 |
21K00979
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研究機関 | 公益財団法人古代学協会 |
研究代表者 |
平田 健 公益財団法人古代学協会, その他部局等, 客員研究員 (60459998)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 学校考古学史 / 考古学・人類学模型標本 / 中・高等学校による発掘調査 / 井上式地歴標本製作所 / ドルメン教材研究所 / 角田文衞 |
研究実績の概要 |
1900年代から現在に至る初等・中等教育(主に中学校および高等学校)における考古学的活動を(1)ヒト(生徒、教師、研究者)、(2)コト(授業、クラブ活動)、(3)モノ(学校教材)の3つの視点で再評価し、日本考古学史に位置付けることを目的とする本研究において、2021年度は下記の調査研究を実施した。 (1)(公財)古代学協会に寄贈された角田文衞博士遺贈資料中、写真資料の整理方針を決定し、約800枚の写真の番号登録、表題等の入力が完了した。2022年度は、写真のデータベース作成、『角田文衞博士遺贈資料目録 写真資料編』刊行に向けた基礎整理を継続する。 (2)東京国立博物館資料室に架蔵されている野口義麿資料の悉皆調査、研究代表者がこれまでに収集してきた中・高等学校編集の発掘調査報告書に関する書誌情報をデータ化。2022年度は福島県下など、考古学的活動が活発であった地域で文献調査を行う。 (3)大阪大学総合学術博物館(島津製作所標本部・人種模型標本)、天理参考館(井上式地歴標本・人種模型標本)、高知県立歴史民俗資料館(ドルメン教材研究所・古代土器複製標本)、東京国立博物館(古鏡模型標本)で調査を実施。高知県立歴史民俗資料館所蔵、ドルメン教材研究所『古代土器複製標本』は国内2例目となる発見で、弥生時代前期「阿方式 甕形土器」模型標本は初出であることから、実測図を作成した。天理参考館所蔵の人類学模型標本は、関根正直(東京女子高等師範学校)と芳賀矢一(東京帝国大学)が監修した「歴代服装模型」などである。基台部の刻印と、「博多人形元祖/井上式地歴標本製作所」のラベルから、これら刻印が井上清助の工房で製作された品物であることが明らかとなった。これまで、ラベルがない模型標本の製造・販売元は不明であったが、刻印が井上式地歴標本製作所の製品の証左であることを初めて確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、(1)ヒト:(公財)古代学協会に寄贈された角田文衞博士遺贈資料中、初等・中等教育までの調査記録および写真資料の分析。『角田文衞博士遺贈資料目録 写真資料編』の編集。(2)コト:刊行物や学術雑誌から初等・中等教育の考古学的活動を全国的に収集し、傾向を把握。福島県下の考古学的活動に関する調査(図書館、学校施設など)。(3)モノ:考古学模型標本(大阪大学、和歌山大学、奈良女子大学)、人類学模型標本(青森県立弘前中央高等学校、天理参考館)の調査、図鑑用写真撮影および編集。を計画した。 (1)遺贈写真資料のうち、本研究の対象は青年期(京都帝国大学卒業)までであるが、写真の内容などから、(公財)古代学協会創設の1960年代まで範囲を広げることとした。当該写真のナンバリング、簡易台帳の作成までは終了。また、1929年から1935年までの日記のスキャン、内容精査に着手できている。 (2)北海道や兵庫県、東京都など研究代表者が既に所蔵している文献に加え、新たに購入等した報告書から、書誌情報を入力した。2021年度には福島県下の考古学的活用に関する調査を予定していたが、コロナ禍の緊急事態宣言、3月16日に発生した地震による交通機関の不通により、当該調査は2022年度に繰り越すこととした。 (3)考古学模型標本については、大阪大学、高知県立歴史民俗資料館、東京国立博物館、人類学模型標本については、天理参考館で調査を実施し、実測図の作成及び図鑑用写真撮影を行うなど、おおむね計画通りに調査を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の計画は、(1)ヒト:角田文衞の高等学校までの考古学的活動について、調査記録および写真から考究した目録の刊行。都立高校教員の松井新一の活動及び考古学教育に関する調査。(2)コト:東京都、静岡県、愛知県の考古学的活動に関する調査(図書館、学校施設など)。(3)モノ:考古学模型標本(大阪大学、高知県立歴史民俗資料館)、人類学模型標本(金光図書館、福岡県立福岡中央高等学校)の調査、図鑑用写真撮影および編集。博多人形製作技法に関する調査(博多人形工房)。としている。 (1)角田文衞の旧制成城高等学校における考古学的活動のうち、1933年実施の横浜市矢上谷戸貝塚調査に関して概要を報告している。本年度は1931年の横浜市折本貝塚調査に関する資料整理と概要の公刊、日記の通読により考古学者との交流などを復元していく。その成果は『角田文衞博士遺贈資料調査報告 写真資料編』に取りまとめる計画である。 (2)東京都の考古学的活動に関してはおおむね報告書情報を入力できているため、福島県、静岡県および愛知県下での文献調査(図書館の郷土資料室)を実施する。 (3)考古学模型標本(大阪大学、奈良女子大学)、人類学模型標本(金光図書館、福岡県立福岡中央高等学校)の調査、図鑑用写真撮影および編集。博多人形製作技法に関する調査(博多人形工房)を予定。考古学・人類学模型標本の原型制作者のうち、松原岳南と荒谷芳雄について集中的に調査を行い、その成果を論文としてまとめる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
文献調査(福島県下)がコロナ禍および3月16日の地震による交通機関の不通で実施できなかった。当該地域の調査を2022年度実施するため、その際の文献複写費として使用する計画である。
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