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2022 年度 実施状況報告書

パレスチナ沿岸地域に展開した古代の覇権主義勢力と在地社会に関する考古学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K00981
研究機関独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館

研究代表者

小野塚 拓造  独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 主任研究員 (90736167)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードゼロール / エジプト新王国 / アッシリア / 土器 / レヘシュ / 青銅器工房
研究実績の概要

本研究の目的は、パレスチナの沿岸地域を事例に、古代西アジアに形成された領域国家や帝国についての理解を深めることである。覇権主義的な強国がパレスチナの在地社会にどのような影響を及ぼしたのか、在地社会は外来勢力に対してどのように反作用したのか、といった「問い」に通史的にせまり、古代西アジア史の新たな一面の叙述を試みる。
2023年度も昨年に引き続き、ゼロール遺跡の調査記録(図面、調査日誌、現場写真など)と出土資料の整理、デジタル化作業を進めた。その過程で、1)同遺跡に後期青銅器時代の居住地が建設された年代が従来考えられてきた時期よりもやや遅い前15世紀末葉であること、2)エジプト様式の土器が事前調査で把握していた以上に多く散見されることを、新たに確認することができた。同遺跡が所在するシャロン平野が前14~前13世紀にかけてエジプト新王国の影響下にあった可能性を指摘できる点で重要な成果となった。
また、別のプロジェクトで取り組んでいたレヘシュ遺跡の出土物の整理作業において、同遺跡で鉄器時代末期(前7世紀頃)に粗末な集落が営まれていたことを確認する機会があった。こうした考古資料は、アッシリア帝国支配下の一般的な村落の生活や物資の流通の一端を示すものとして貴重であるため、本研究課題の一部として検討を進めることとした。さらに、ローマ帝国の地中海東岸地域への影響について探る目的で、イスラエルのガリラヤ地方の諸遺跡や、ネヴェヴ地方のナバテアの都市遺跡などを巡検する関連調査を実施した。
今年度の調査研究によって得られた新知見は、いずれもエジプト新王国、アッシリア帝国、ローマ帝国の直接的、間接的影響に対する在地社会の動向を示す材料となるもので、古代西アジア史をより多面的に描くための意義のある研究につながると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度に引き続き、ゼロール遺跡の調査記録の整理とデジタル化、土器図面のトレース作業を、研究協力者の助力を得ることで継続的に進めることができた。その中で、同遺跡の後期青銅器時代の居住史の大枠を把握し、在地の物質文化にエジプト新王国の影響が予想よりも顕著に見られることを確認できた。そのほか、アッシリア帝国やローマ帝国のパレスチナへの進出に関連する事例研究にも着手することができた。したがって、本研究は概ね順調に進展していると捉えることができる。

今後の研究の推進方策

2023年度も、ゼロール遺跡の調査記録の整理とデジタル化を継続し、同遺跡の居住史の復元に取り組む。同時に、これまでの資料整理から見えてきた興味深い事例、すなわちエジプト新王国のゼロール遺跡への進出、アッシリア帝国支配下の村落の実態、ローマ帝国の進出と在地社会の変化についてさらに研究を進め、古代パレスチナの在地社会がどのように覇権主義勢力に反応したのかというテーマについて通史的に検討するとともに、個々の研究成果を論考として発表できるようにまとめる。

次年度使用額が生じた理由

2022年度に予定していた調査記録の整理・データ化作業が想定よりも短い時間で完了したため、時間給で支出している謝金の総額が当初の見積もりよりも少なくなり、次年度使用額として残った。2023年度は、次年度使用額を合わせた総額を、イスラエルへ渡航しレヘシュ遺跡出土資料を調査するための旅費および調査記録の整理・データ化のための謝金(人件費)に使用する計画である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 「東地中海における青銅器・鉄器時代移行期」を理解するために2022

    • 著者名/発表者名
      小野塚拓造
    • 雑誌名

      古代文化

      巻: 74-1 ページ: 37-40

    • 査読あり
  • [学会発表] Bronze Industry Remains at Tel Zeror Revisited2023

    • 著者名/発表者名
      Takuzo Onozuka and Ofer Naveh
    • 学会等名
      Urbanism and Technological Innovation: A view from Ancient Israel: The 2nd Workshop
    • 国際学会
  • [学会発表] 南レヴァントにおける青銅器・鉄器時代移行期の様相2022

    • 著者名/発表者名
      小野塚拓造
    • 学会等名
      アコリス考古学プロジェクト2022 公開シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] 古代エジプト新王国時代におけるガラスの白濁技法の変遷の解明2022

    • 著者名/発表者名
      工藤洋大、小野塚拓造、山花京子
    • 学会等名
      日本文化財科学会第39回大会

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公開日: 2023-12-25  

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