研究課題/領域番号 |
21K00983
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研究機関 | 公益財団法人元興寺文化財研究所 |
研究代表者 |
塚本 敏夫 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (30241269)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 武器祭祀 / 武具祭祀 / 鉄てい / 鍬形 / 小札 / 祇園祭 / 剣鉾祭 |
研究実績の概要 |
本研究では以下の5項目の解明を行う。①武器・武具祭祀が日本列島にいつから受容されたかを解明するため、弥生時代の実態、特に鉾の祭祀利用を解明する。②韓半島や中国大陸との比較検討を行うことで、その系譜や祭祀の実態解明に迫る。③人形祭祀等の律令的祭祀や他の祭祀との関係性を探る。④古代の関東地方や東国地方での武器・武具祭祀の盛行の実態解明を行う。⑤神社奉納品の再整理と祇園祭の関係性を探る。 研究成果は①令和2年に倉吉市中尾遺跡第3次の弥生中期の焼失住居(1号竪穴建物)の柱の脇に突き立てられた状態の鉄鉾・板状鉄斧・鋳造鉄斧が発見され、住居の廃絶時の鎮め物であった可能性が高い。③鉄製武器の祭祀利用が弥生時代中期に遡ることが判明し大きな成果を得た。新たに古墳時代中期に板橋区の赤塚氷川神社北方遺跡の57号建物跡から鉄ていと砥石が住居の廃絶時の祭祀に利用されている事例が確認でき、鉄テイやその後古代でも盛んに古墓から出土する鉄板を含めて、その用途や意義を再考する必要があることが判明した。④新たな展開として柏市中馬場遺跡から古代の小札の他に室町期の溝から草綴が出土していた。沖縄の平敷屋古島遺跡の出土品との関連性が今後の課題となろう。また、更埴市石川条理遺跡の室町時代の大溝から前立物(鍬形)が折り畳んだ状態で出土、今後の調査が期待される。⑤かすみがうら市の藤切祇園祭りが長刀を利用した祇園祭で、古い要素を残しており、剣鉾祭りの地方拡散を知るうえで重要であり、次年度以降調査を行う予定である。 成果発表は①近鉄文化サロン阿倍野で「九頭神廃寺から百済寺(枚方市)へ ―九頭神遺跡出土小札転用人形が語る百済と古代枚方の関係―」(講座発表)②第17回古代武器研究会で「儀仗としての武器・武具 -鎮め・祈り・畏敬-」(研究発表)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ禍で特に海外での調査ができず、研究項目②の韓半島や中国大陸との比較検討を行うことで、その系譜や祭祀の実態解明の進展がなく、資料調査の機会が限られ研究費を次年度に繰り越した。その他は順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
やはり、新型コロナ禍で韓国、中国での海外調査が進展しない場合は中国、韓国の研究協力者を募り、オンラインでの意見交換ができる体制つくりを模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では高解像度のマイクロスコープを購入して、資料調査時に使用する計画であったが、手持ちで調査に行くには機材が大きく研究に支障が出るため、購入を見送り、次年度に更に小型のマイクロスコープまたは代替品を探して購入する計画である。また、外注分析に関しても柏市中馬場遺跡出土の革小札の炭素年代測定のためのは先方への申請の関係で次年度になったため、物品費とその他の未使用繰り越し額が生じた。上記で述べた様に、未使用繰り越し額は次年度に使用予定である。
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