研究課題/領域番号 |
21K00986
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
盧 忻 岩手大学, 理工学部, 助教 (00431461)
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研究分担者 |
今野 晃市 岩手大学, 理工学部, 教授 (90333476)
木村 彰男 岩手大学, 理工学部, 准教授 (00281949)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人物埴輪顔面 / 階層的クラスタリング / 顔の特徴 / 類似性 / 定量化 / 可視化 / 分類 |
研究実績の概要 |
考古学研究においては,個体間・古墳間の埴輪顔面同士の類似性を定量化・可視化し,人物埴輪顔面に関する製作規格の有無を探ることを求めていた.この目的を達成するために,次年度は,下記のテーマに関して研究を実施した. (1) 人物埴輪の分類.人物埴輪の目,鼻,口といった顔の特徴を取り出し,階層的クラスタリングを用いることで,似た特徴を持つ埴輪群を1つのクラスタに分類した.これにより,各埴輪がどのように関連しているか,つまりその相互関連性を明らかにした. (2) 古墳群の関連性の調査.本研究では,人物埴輪の特徴,特に目,鼻,口などの顔の特徴から,製作時期や地域,さらには制作者の技術レベルを推測することを目的とした.また,階層的クラスタリングが考古学的な発見の文脈を理解するのに役立つことも確認した.具体的には,九十九里地域の古墳群から出土した埴輪群が他の地域や時期の埴輪群とどのように関連しているかを調査した.さらに,人物埴輪の起源や文化的な交流,工人の移動パターンを解明する試みを行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,古墳間や個々の埴輪顔面間の類似性を定量化・可視化する目標を達成した上に,高度なクラスタリング手法を用いて人物埴輪顔面の分析を行い,その結果と考古学者による主観的な分析結果とを評価するという目標を達成した.計画通りに次の成果が得られたことから,この3年間の計画は2年目として,おおむね順調に進展していると評価している.
(1) 人物埴輪36点を解析し,頭部4つの部位の点群をそのまま用いた個体間・古墳間の点群類似度の距離行列,および頭部4つの部位の指数化された特徴量用いた指数類似度の距離行列を設計に成功した.
(2) 人物埴輪36点に対して計算された類似度の距離行列から階層的クラスタリングアルゴリズムを用いて種別分類を試みた.求められた量的かつ客観的な分類結果は,先行の研究で考古学者によって主観的に得られた結果とほぼ同じであり、提案された種別分類方法が量的な考古学的視点からの考古学的評価の妥当性を支持することに成功した
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今後の研究の推進方策 |
3年目から,より高度なクラスタリング手法や他の機械学習手法との組み合わせにより,さらに洗練された分析を実施する.また,ヘルメットを被っているものや,縦長の鼻を持つものなど,他のタイプの埴輪を含む追加の埴輪を用いてタイプ分類も行う.タイプ分類結果に基づいて,得られたデータに基づいてその芸術的価値と出所を分析する.さらに,埴輪の特徴をより詳細に把握し,それらが示す文化的な意義や歴史的な背景をより深く理解するための道を開く.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に計画していた打ち合わせ等を諸事情により行う回数が少なかったため,その経費を次年度の打ち合わせおよび成果発表の旅費として使用する予定である.人件費およびその他で計上していた学会誌投稿料は,次年度の論文掲載と学会参加に使用する予定である.
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