研究課題
第1年度(2021年)はコロナ禍による渡航制限、行動制限の影響を受け、予定していた現地調査による石器石材の観察と化学分析が行えなかった。その一方で、石材調査のために必要な関連周辺地域の岩石を研究協力者の手助けによって入手することが叶い、それら岩石試料の岩石学的・鉱物学的分析を行った。日本の、特に東日本における縄文時代の石器石材調査に関連して、岩手県早池峰山塊の蛇紋岩、滑石岩および関連の緑色変成岩類、新潟県糸魚川地域の蛇紋岩、ヒスイ輝石岩、緑色変成岩類の分析を行った。この2か所は本研究で注目している緑色のネフライト(緑閃石)の産地であることが確認された。また、北海道地方日高地方のに産する緑色岩(「アオトラ石」)や神居古潭変成岩帯の緑色片岩、青色片岩の分析を行った。これらの岩石の一部は、東北日本で多く出土している石斧と同質のものと同定された。さらに縄文時代末から弥生時代の石器石材調査のための予備調査として碧玉、緑色凝灰岩の収集と化学分析をおこなった。これらの石材については北海道、東北、北信越、山陰地方の既知の産地からの収集と分析を行った。これらの化学分析は、台湾・中央研究院地球科学研究所のSEM-EDS及びEPMAを用いて行い、並行してポータブルXRFによる確認分析も行った。石材の分析を通して、各地域の岩石学的・鉱物学的な特徴の相違点の理解が進み、また化学組成値のデータベース作成が進んだ。日本の先史時代に利用されていた石材の基本的なデータベースが構築できたことで、日本列島では産出しないアジア大陸由来の石材である白色ネフライト(透閃石岩)の装身具を見出すに至った。この成果は日本第四紀学会2021年大会で発表した。また、一連の調査成果については、考古学誌、および関連する地方の調査報告書で発表を行った。
3: やや遅れている
コロナ禍による渡航制限、行動制限の影響を受け、予定していた調査の進捗が得られなかったことによる。
第1年度(2021年)はコロナ禍による渡航制限、行動制限の影響を受け、予定していた現地調査および石器石材の観察と化学分析が行えなかった。その一方で現地調査のために必要な関連周辺地域の岩石が研究協力者の手助けを得たことによって入手でき、それら岩石試料の岩石学的・鉱物学的分析が進んだ。現地調査に必須のデータベース作成は必須である。今後も実験室での化学分析を継続し、データベースの充実を図る。また移動制限や訪問制限が解かれ次第、現地調査を再開する。すでに、北海道、東北、関東、北陸、中国・四国、九州、沖縄地方での調査先の選定と打診が進んでいる。また、諸外国については、第3年度からの調査になることを見越し、東南アジア(タイ、ベトナム)、中米(メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス)現地の共同研究者と日本人研究者(考古学者)との具体的な分析対象の話し合いを進めている。
コロナ禍による、渡航・移動制限のため、予定していた現地調査ができず、旅費、調査で発生する謝金、消耗品等の必要経費の支出がなかった。繰り越し残高は2022年度に運用する予定である。2022年度は夏以降、渡航及び現地調査の再開が見込まれる。残高の大半は2021年度に予定していた日本列島での石材調査旅費(北海道、東北地方、関東・中部地方、中国・四国地方、九州・南西諸島)と謝金に運用する。状況により東南アジア(タイ、ベトナム)、中米(メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス)への渡航費用に充てる。その他、調査に必要な消耗品の充足と調査に使用する簡易測量及び撮影機材、PCソフト等の購入に充てる。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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