研究課題/領域番号 |
21K00988
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
内山 純蔵 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 客員教授 (40303200)
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研究分担者 |
桑畑 光博 九州大学, アジア埋蔵文化財研究センター, 学術研究者 (70748144)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 鬼界アカホヤ / 動物遺存体 / 土器脂質分析 / 生業 / 火砕流 / 残留デンプン / 石器組成 / 災害 |
研究実績の概要 |
2022年度は、K-Ah(鬼界アカホヤ)噴火前後の時期の九州地方の遺跡における遺物の保存状況確認を継続しつつ、動物遺存体の分析を本格的に開始した。また、弘前大学人文学部・スウェーデンのルンド大学・ストックホルム大学の研究者との協働体制「CALDERA」プログラムを立ち上げた。その概要を以下に述べる。なお、噴火による被災状況に基づいて行った地域分けの呼称であるが、国際間の協力において混乱を避けるため、以下のように訂正している:火砕流にさらされた地域>Zone0、テフラ層厚30cm以上>Zone1、20cm以上>Zone2、0cm以上>Zone3、その外>Zone4 (1)Zone0及び1の貝塚の動物遺存体、とくに噴火直前については苦浜式期の霧島市宮坂貝塚、直後については南さつま市上焼田貝塚(西之薗から轟B2式)に集中して調査した。いずれもSpecial working placeの可能性が高いと判断した。 (2)CALDERAを通じて、昨年度の宮崎県清武川流域に続き、同県天神河内遺跡(いずれもZone1)、鹿児島県南田代および牧野遺跡(Zone0)、佐賀県西畑瀬および九郎遺跡(Zone3)の土器脂質分析を行った。計91点中から、81点について良好な脂質資料を検出した。 (4)昨年度来、英雑誌Antiquityに投稿中である、K-Ah噴火前後の種子島地域の生業に関する論文は、タイトルをDisaster, survival and recovery: the resettlement of Tanegashima Island following the Kikai-Akahoya ‘super-eruption’, 7.3ka cal BPと変えて、2023年3月現在第3校を終え、掲載に向けての最終段階に入った。 (5)活動の概要を、日本考古学協会で発表した:桒畑光博、内山純蔵、上條信彦、 スヴェン・イサクソン、ピーター・ジョーダン「巨大噴火災害を受領採集民はいかにして凌いだのか」日本考古学協会第88回総会 研究発表(2022年5月29日)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、K-Ah(鬼界アカホヤ)噴火による動物利用の影響の解明を目指して、動物遺存体分析を中心に行う予定であった。しかしながら、昨年度より、スウェーデンのルンド大学、ストックホルム大学、弘前大学北日本考古学研究センターの研究者の協力を得ることができた。これにより、土器脂質分析、残留デンプン分析を加えて展開することになり、K-Ah前後の生業についてより総合的な観点を得ることが期待できるようになった。とくに、本年度より、当研究と上記協力者によって、災害に対する社会の文化的対応の解明を目指す研究プログラム、すなわちDisaster archaeologyの活動基盤であるCALDERAを組織した。正式名称、webリンクは以下のとおり: 正式名称:CALDERA Nordic-Japan Research Programme (Disaster Studies) リンク:https://portal.research.lu.se/en/projects/caldera-nordic-japan-research-programme-disaster-studies 本プログラムは、本研究に触発され、"Disaster Archaeology" という概念を基礎として、K-Ahだけにとどまらず、環境の変化と文化との関係についてより実証的な取り組みを、精緻な土器編年を特徴とする縄文時代を主なフィールドとして行おうとするものであり、新たな国際研究協力のあり方を示すものである。 以上の活動から、K-Ahを含む環境変化と人間文化の変動との関係性について、第9回世界考古学会議(WAC、プラハ)でオンライン発表を行った。タイトルは"Dietary Shift towards Terrestrial Resources in Neolithization? A Northeast Asian Perspective"であり、2022年7月に行われた。 以上のように、本年度までの本研究の活動は、予定していた動物遺存体の分析研究にとどまらず、隣接分野も取り込んで国際的な協働研究に発展し、さらに広がりを見せようとしている。よって、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の活動により、CALDERAを通じて、他機関・他分野の研究者との協働体制が整った。今後は、CALDERAを基盤として、動物遺存体の分析と並行して、土器脂質分析、残存デンプンの調査を行う。また、石器組成・遺構調査などにも視野をできる限り広げつつ、当時の生業活動全体を視野に入れて調査を行う。また、その結果を、学会・国際学会・国内・国際誌などにおいて公表していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
宮崎県延岡市大貫貝塚(Zone2)の調査(2022年12月15から17日、内山純蔵および桒畑光博が参加)において、延岡市から市史編纂の必要経費として旅費が支給されたため。翌年度分としては、現在使用中のカメラが不調のため、物品購入に充てる予定。
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備考 |
他に、弘前大学北日本考古学研究センターが協力しています。タイトルは: CALDERA Nordic-Japan Research Programme (Disaster Studies)
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