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2021 年度 実施状況報告書

大名墓所の石材産地同定による文化産業の時代変遷の考証~土佐藩主山内家墓所を例に~

研究課題

研究課題/領域番号 21K00990
研究機関高知大学

研究代表者

徳山 英一  高知大学, その他部局等(名誉教授), 名誉教授 (10107451)

研究分担者 望月 良親  高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 講師 (30814040)
谷川 亘  国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (70435840)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード大名墓 / 産地同定 / 帯磁率 / 非破壊物性計測 / 色測定 / 花崗岩
研究実績の概要

日本各地には江戸時代に整備された広大な大名墓所が存在し、墓所内に奉られている数メートルにもわたる巨大な墓石群は当時の政治と文化を映し出す鏡になっている。大名墓所の墓石に使用されている石材の産地および運搬工程は当時の文化を知る手がかりとなりうるが、石材産地に関する文献記録が少なく、産地がはっきりしない墓石が多い。
高知県山内家大名墓所には花崗岩で制作された墓石があるが、その産地については議論が残されていた。そこで本研究では、土佐山内家の大名墓所の花崗岩製の大名墓(3基)を対象に帯磁率、有色鉱物の粒径、カリ長石の色の非破壊岩石分析を行った。非破壊分析で得られた特徴について、高知県で産出される花崗岩と瀬戸内海で産出される山陽花崗岩と比較し石材産地の推定を行った。
その結果、墓石の帯磁率は0.3~0.4×10-3 SIを示すとともにガウス分布に従った。また、花崗岩に含まれる有色鉱物の粒径は対数正規分布に従うとともに、有色鉱物の含有率と粒径は他の花崗岩と比較して大きい特徴を示した。帯磁率と粒径の特徴は高知県南西部大月町で産出する花崗岩にも認められた。一方、山陽花崗岩については白石島の花崗岩が唯一2つの特性に合致したが、墓石と比較してカリ長石の色が強く赤みがかっていた。本研究の結果、山内家墓碑の花崗岩は高知県南西部の大月町に産出する花崗岩由来である可能性が高いことが分かった。江戸時代以前の中世に造られた高知県の石造物は山陽花崗岩由来だと考えられている。本研究結果は江戸時代前後に高知県の石材の流通ルートが変化したのか、変化したとしたらそのきっかけは何か、もしくは中世の石造物が山陽花崗岩由来であるという記録が不正確なのかという点で重要な示唆を与える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在までに主に花崗岩で制作された土佐藩山内家の大名墓碑を対象として調査分析を進めてきた。調査結果を論文にまとめて、国際誌(Journal of Cultural Heritage)に2022年3月に投稿した。帯磁率のデータを踏まえた花崗岩の産地同定手法の考察がメインとなる内容である。また、堆積岩で製作された山内家大名墓碑の調査についても、これまでに堆積岩が採掘された候補地の選定を行い、下見とサンプリングを行ってる。

今後の研究の推進方策

花崗岩の石材産地同定の手法には帯磁率をメインに分析を行った。一方、堆積岩の石材産地同定は帯磁率だけでなくpXRFを用いた分析を行う予定である。そのため、pXRFの基本特性の把握および、分析方法の確立に時間を要する可能性がある。
これまでの研究結果で山内家墓碑に使用されている花崗岩は高知県南西部の大月町に産出する花崗岩由来である可能性が高いことが分かったが、この花崗岩は名古屋城の築城時に使用されていることが文献に記述されている。本研究の発展性をふまえ、実際に名古屋城で大月町の花崗岩が使用されているのか検討を進めていくことになった。さらなる資料収集を行い、今年度もしくは次年度に名古屋城の石垣を対象とした分析方法の確立を目指す。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症のために共同研究者間での対面での研究打ち合わせと東京品川大井公園にある山内家15代大名(山内豊信)墓碑の調査を行うことが出来なかった。今年度は確実に共同研究者間での対面での研究打ち合わせと豊信の墓碑の調査を実施できるように日程調整を行う。

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公開日: 2024-12-25  

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