研究課題
本研究は、土器や窯・炉跡内面の焼土等の被熱遺物・遺構の材質中に大量に含まれている鉄酸化物の生成条件を磁気学的・鉱物学・地球化学的観点から明らかにし、遺物遺構の被熱環境に関する新たな知見を見出すことを主な目的としている。土器や焼土には焼成前の土壌・粘土中と比べて多量の鉄酸化物が含まれ、考古地磁気学や磁気遺構探査などで検知される磁場・磁化の主要因となっているが、被熱による増加のメカニズムはよく分かっていない。本研究は、土器片・熱を受けた遺構の焼土、および熱を受ける前の土壌・粘土等を対象として、磁気学的・鉱物学的手法の両面からのアプローチで熱を受け生成される鉄酸化物の特徴を明らかにし、文化財科学・考古学で注目されている土器焼成中の窯内や炉跡等における温度や酸化還元状態と土器・焼土の色に関する新たな知見を提供するために、(1)古代式復元窯による焼成と環境測定、(2)電気炉による制御下での焼成、(3)土と焼土を磁気的・鉱物学的に分析すること、の3つの柱で構成する。今年度が最終年度の本研究では、(1)について、備前焼作家が作成した古備前焼復元窯において、最大11か所で温度の同時観測をして解析し、窯内の空気の流れと滞留、温度成層の存在を確認するとともに、作家が意図している窯焼成との関連性、また、作家が意図しない温度変化が実現する陶器表面が存在することを明らかにした。(2)については、市販の粘土2種類について、粘土を複数の環境(温度・空気)と復元窯で焼成し、(3)磁気的・鉱物学的な分析を進めた。生成鉄鉱物の種類や生成量と温度・粘土の酸化の間の複雑な関係が導出された。さらに、低温で焼成されたと考えられる陶片(陶棺片)について、人工加熱を加える前後での磁性を調べた結果、大きく異なることがわかり、少なくとも加熱温度は600℃以下であると言えた。
古地磁気・岩石磁気用のプロットツールサービス。本研究で測定している岩石磁気・古地磁気の測定用に修正を加えた。
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Journal of Cultural Heritage
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岡山理科大学フロンティア理工学研究所研究報告
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