研究実績の概要 |
本課題では漆樹液の非青色成分中に新たな漆塗膜生成因子として発見した黄色ラッカーゼを精製、分析し、その機能と構造を解明することを目的とする。R4年度は、黄色ラッカーゼ(Lac)の酵素機能の分析を行った。 黄色Lacのラッカーゼ活性の特徴を青色Lacと比較するため、各基質のラッカーゼ活性をpH2.5-8.0の範囲で測定した。基質に3-メチルカテコールを用いた場合、黄色Lac活性はpH6.5で、青色LacはpH8.0で、最大値を示した。pH6.0以下では黄色Lacが青色Lacより高い活性を示し、pH7.5-8.0では青色Lacが黄色Lacより高い活性を示した。シリングアルダジンの場合は、黄色LacはpH7.5、青色LacはpH8.0で最大値を示した。pH5.0-7.5の領域で、黄色Lacは青色Lacより高い活性を示した。2,6-ジメトキシフェノールの場合は、黄色LacはpH6.5-7.5、青色LacはpH8.0で最大値を示した。黄色Lacは青色LacよりpH3.0-8.0の領域で高い活性を示した。4-メチルカテコールの場合は黄色LacはpH6.0、青色LacはpH8.0で最大値を示した。黄色LacはpH5.5-7.0で青色Lacより高い活性を示し、青色LacはpH7.5-8.0で黄色Lacより高い活性を示した。ABTSの場合は黄色LacはpH3.5,青色LacはpH3.0で最大値を示した。pH2.5-3.0で青色Lacは黄色Lacより高い活性を示した。グアヤコールの場合は、黄色LacはpH7.0、青色LacはpH8.0で最大値を示した。pH5.0-8.0の領域で黄色Lacは青色Lacより高い活性を示した。以上の結果より、ウルシの黄色ラッカーゼの酵素機能は存在従来知られた青色ラッカーゼとは性質が異なることが明らかになった。
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