研究課題/領域番号 |
21K01000
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
齊藤 有里加 東京農工大学, 学内共同利用施設等, 特任助教 (60736891)
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研究分担者 |
金子 敬一 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20194904)
横山 岳 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20210635)
棚橋 沙由理 筑波大学, 教育推進部, 准教授 (20834930)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 動態展示 / 継承 / アーカイブ / 3D化 / 動画化 / 暗黙知 |
研究実績の概要 |
本研究は国内自動繰糸機に関する「動態展示」技術の保全を事例として、人的技能・技術継承モデルを開発することを通して、産業遺産の保存技術構築と、活用に資することを目指すものである。昭和39(1964)年に開発された国産自動繰糸機HR型を対象とし、機械機構の3Dデジタル化、動画による可視化を行い、産業遺産に重要な無形資料である「技能・技術」の揮発を防ぐ新たな手法の開発を試みる。 令和4年度の研究実績として、HRR型自動繰糸機の展示機のメンテナンスの実施とその動画記録を行った。メンテナンス作業の撮影によって通常の運転時では見ることのできない機械機構の確認や、特殊なパーツの特徴と希少性、作業における留意事項についてエンジニアと意見交換を行うことができた。通常の産業機械としての機械のメンテナンスと、動態展示を意図したメンテナンスには違いがあり、作業の方向性を検討しながら実施した。
また、機械動態についてどのような部分を3D化すべきかエンジニアと調整を行い、デジタル化したい部分とそれに必要な図面の抽出作業を行った。3Dデジタル化については繰糸機構部分に焦点を当てて実施を行うこととした。 また、他機種(ガラ紡)を用いて動態展示の継承について市民参加型の活用と検討を行った。また、大学博物館等協議会 2022 年度会・第 17 回博物科学会においてこれまでの本研究成果の報告を行った。次年度以降は引き続き機械機構の3Dデジタル化について進め、デジタル上で動態機構の再現化について検討を重ねるとともに、動態展示機の調査を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学外資料調査や、エンジニアとのHRの検証については過去2年間のコロナの影響もあり、今後の研究期間と並行して調査を実施する必要があるものの、HR機の3Dデータ化や、メンテナンス作業の実施と撮影記録によるデジタルアーカイブ化については具体的な図面調査やメンテナンスの記録と動画編集作業を進めることができた。出来上がった動画を用いてどのような資料継承の活用ができるか、動態展示の他館の実例と重ねながら検証をしていく必要がある。また、他機種(ガラ紡)を活用した動態展示継承のためのモデルプログラムは高い関心が得られた。継承への理解に対して、ワークショップやSNSを活用しての発信に一定の効果があることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度も、HR機のデジタルアーカイブ化と3D化に関しては今後もエンジニアと連携を取りつつデータ化を進めていく、また並行して国内のHR機の所在確認調査、動態展示事例調査を進めたい。出来上がったデジタルデータの活用についての検討を進めていく。 また、参加型による動態展示の継承の可能性について、HRよりも機械機構がシンプルな「ガラ紡」を用いて、稼働に必要な素材の確保の可能性を検討してきたが、ワタの栽培によるプロジェクトの参加はおおむね好評であり、12月のワークショップには4月からワタを栽培した参加者が多数現れ、SNSでの成果発信も好評であった。機械機構の継承について引き続き検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度も引き続きコロナの影響で学外資料調査やエンジニアとのHR機の検証回数に影響があり、3Dデジタル化の仕様や、機械機構部分の抽出についての実施を調整してからのデジタル化の実施となるため、効率的なデータ化について検証を重ねた。具体的な3D化を次年度に向けて実施していく。
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