研究課題/領域番号 |
21K01010
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研究機関 | 横須賀市自然・人文博物館 |
研究代表者 |
柴田 健一郎 横須賀市自然・人文博物館, その他部局等, 学芸員 (20443327)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 地層 / 博物館 / 展示 / フォトグラメトリー |
研究実績の概要 |
神奈川県三浦半島と岩手県田野畑村で地質学的なフィールドワークを実施し,地層の特徴を記録するとともに,露頭写真を撮影した。複数視点から撮影された写真を基に撮影物の三次元的な形状を復元する手法,フォトグラメトリーによって,8点の地層の3Dモデルを構築した。すなわち,中新統三浦層群三崎層のデュープレックス構造 (神奈川県三浦市黒鯛込),北武断層の断層ガウジ,中新統三浦層群逗子層のタービダイトとスランプ構造 (神奈川県横須賀市野比海岸),白亜系宮古層群平井賀層のトラフ型斜交層理,宮古層群羅賀層の礫岩 (岩手県田野畑村羅賀),宮古層群田野畑層の津波堆積物,ハンモック状斜交層理 (岩手県田野畑村平井賀) である。 令和3年度以前に収集したデータを基に,地層の基礎研究を進めた。福島県の古第三系石城層,インドネシアの古第三系バヤー層,米国の三畳系上部チンレー層について,砂礫堆堆積物の厚さと現世河川の経験式に基づいて古河川の流路横断面の規模,流量,流域面積,流域の長さを復元し,積み重なり様式の外的要因 (海進,構造運動,気候変動) との関係と,砕屑物の後背地について検討した。その結果,海進によって従来のモデルと異なる積み重なり様式が発達することがあること,構造運動や気候変動によっても従来の海進によるモデルと類似の積み重なり様式が発達する場合があることが明らかとなった。また,流域の復元から,後背地を従来よりも詳細に復元することができた。これらの研究成果は千葉大学大学院融合理工学府へ博士学位論文として提出した。今後は,これらの地層についてフォトグラメトリーによる3Dモデル化を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画していた米国西部でのフィールドワークが新型コロナウイルス感染症拡大の影響で実施できなかった。この地域の地層は露出の状況がよく,本研究の検討対象として適している。また,同様の理由で国内のフィールドワークも十分に実施できなかったため,「やや遅れている」と判断した。限られたフィールドワークの下で,これまでに8件の地層の3Dモデルを構築した。より広域に露出する地層や,徒歩でのアクセスが困難な地層の3Dモデルを構築するため,ドローンによる露頭写真撮影の準備を行った。 一方,フォトグラメトリーによって作成した足跡化石の3Dモデルを横須賀市自然・人文博物館の特別展示「足跡化石から探る太古の世界―恐竜からナウマンゾウまで―」で展示した。また,それら3Dモデルに基づいた深度マップを展示解説書に掲載した。さらに,フォトグラメトリーについての解説を横須賀市自然・人文博物館ホームページに掲載した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度:フィールドワークを継続し,地層の3Dモデルの蓄積を継続する。典型的な堆積構造や地質構造を含む露頭を選定する。米国でのフィールドワークが困難である場合は,国内の地層を重点的に対象とする。 令和5年度:地層の3Dモデルの蓄積を継続しつつ,それらを素材とした展示物を開発する。タブレット端末で自由に3Dモデルを閲覧できる展示や,3Dプリンターによる模型の制作などを検討する。 令和6年度:開発した展示物を基に展示会を開催し,アンケートやアイトラッキングによって見学者の閲覧行動を調査する。展示物の見学者に対する誘引度,魅了度,教育効果などについて評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外でのフィールドワークが実施できなかったため,次年度使用額が生じた。国内でのフィールドワークを増やすとともに,海外でのフィールドワークの可能性を検討する。また,3Dプリンターの購入やその消耗品の購入に助成金を使用する。
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