研究課題/領域番号 |
21K01011
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研究機関 | 横須賀市自然・人文博物館 |
研究代表者 |
内舩 俊樹 横須賀市自然・人文博物館, その他部局等, 学芸員 (20463086)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 博物館 / 地域生物相 / 三浦半島 / 身近な生物 / 昆虫 / 植物 |
研究実績の概要 |
報告者の所属博物館がフィールドとする神奈川県南東部の三浦半島の地域生物相の成立背景を明らかにするため、地域生物相成立史に関連づけた3つの地域(①鹿児島県奄美大島[春期]、②東京都八丈島および伊豆大島[夏期]、③茨城県東茨城郡南部[秋期])にて、“身近な生物”を選定するための生物相調査を行った。 前述した3地域の調査に際しては、近接レンズとスピードライトを装着した高解像度撮影装置を準備し、①では延295種、②では延454種および延215種、③では延97種の動植物について生態写真の画像データを取得した。なお、②および③は調査協力者による植物同定の途中であり、それぞれ延種数で1~2割程度の増加が見込まれる。 文献ベースでの情報収集については、主に②の地域について進め、昆虫類延約700種をリストアップした。①についても2000年代以降の蝶類を中心とした調査記録をもとに身近な動植物に関連する種のピックアップを行った。さらに、④東京都の多摩丘陵地域については、多摩・三浦丘陵に関する資料から三浦半島との対比が可能な動植物種のピックアップを行った。 上記にて示した三浦半島以外の地域についての現地調査や文献調査の成果は、最終的に三浦半島における身近な昆虫相との対比を行うことから、三浦半島の昆虫相に関する2つの調査も行った。一つは、2017年に発行した三浦半島の一地域における甲虫コレクション約1,800点について専門家の協力のもと再同定を行い、当該地域の甲虫リストから54種を除外し、神奈川県初記録を含む53種を追加した。もう一つは、報告者が2013年度から2020年度までの間、横須賀市環境政策部への調査協力として行った横須賀市内19カ所の昆虫調査記録を同部から提供いただき見直しを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
三浦半島以外の4地域各3季節の生物相現地調査については当年度、研究計画全体で想定した生物相現地調査回数の22%に相当する4回の調査を3地域にて計画通り遂行した。すなわち、①鹿児島県奄美大島[春期]、②東京都八丈島および伊豆大島[夏期]、③茨城県東茨城郡南部[秋期]、である。これらの現地調査にあたり、近接レンズとスピードライトを装着した高解像度撮影装置を計画通り購入し、延1,061種の動植物について生態写真の画像データを取得した。 前述した生物相現地調査で確認した植物の同定は調査協力者が行ったが、想定している現地調査に対して同協力者が必ずしも同行できるわけではないので、取得した生態写真の画像データや採集した葉などをもとに同定を行うためのルーティンを整備した。それにより、前掲①の調査では生態写真の画像データに含まれる植物の大部分を延種数に加えることができた。 文献ベースでの情報収集については、現地調査における雨天時の文献収集活動として位置付けていたため、②ならびに①の一部では現地の調査施設から提供いただいた資料も含め収集を進めることができたが、それ以外では好天に恵まれたこともありWebや所属博物館収蔵図書での収集にとどまった。 上記にて示した三浦半島以外の地域についての現地調査および文献調査の進捗について、前者は計画通りで植物の一部同定を残すのみであり、後者は一部の調査地域においてWebや所属博物館収蔵図書では得られない資料の入手ができた。一方、三浦半島の昆虫相に関する2つの調査は、研究計画にはないものの調査対象4地域との対比を行う上で重要であり、うち一つを成果として公表できた点は計画以上の進展と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
三浦半島以外4地域の生物相現地調査については、研究期間内の遂行を目指して計画通りに実施する予定である。特に、報告者の所属博物館から比較的近い2地域(茨城県東茨城郡南部および東京都の多摩丘陵地域)については、他の2地域より多くの調査回数がこなせるよう調整を行う。 植物については、当年度後半で整備した調査協力者による同定のためのルーティンにより、当年度調査における未同定植物を含め動植物の確認延種数を増やしていく。一方、当年度末に購入した高解像度画像入力装置を中心に採集植物体のスキャンデータ収集システムを整備し、展示として利用可能な高精細植物画像の取得をすすめる。 文献ベースでの情報収集については、できるだけ現地調査より速いペースで進め、調査対象4地域ごとに全体像が把握できるようリスト化し、現地調査における確認および同定ならびに“身近な生物”選定を効率的に進められるようにする。 当年度の調査により、調査対象4地域の“身近な生物”とそれぞれ最終的に対比を行う三浦半島の身近な生物相について、その調査も並行して行うことの意義を再認識した。そこで、当年度に見直しを行った2013年度から2020年度までの横須賀市内19カ所の昆虫調査記録について、“身近な昆虫”の候補になり得る種をリストアップするなど分析を進めるほか、三浦半島地域の文献ベースでの動植物の情報収集を行い、三浦半島の“身近な生物”選定リスト作成を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
これは国内旅費の現地調査の支出予定額から生じたものであり、調査行程に合致した航空券と宿泊のパックの取得による差額である。これは翌年度分として請求した助成金のうち国内旅費と合わせ、報告者の所属博物館から比較的近い2地域(茨城県東茨城郡南部および東京都の多摩丘陵地域)についてより多くの調査回数がこなせるよう使用する。
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備考 |
研究成果に関する論文PDFをダウンロード可能
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