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2023 年度 実施状況報告書

北海道東部,根釧台地における高分解能地形面編年による海成段丘の発達史

研究課題

研究課題/領域番号 21K01015
研究機関北海道大学

研究代表者

近藤 玲介  北海道大学, 農学研究院, 博士研究員 (30409437)

研究分担者 冨士田 裕子  北海道大学, 農学研究院, 農学研究院研究員 (50202289)
竹村 貴人  日本大学, 文理学部, 教授 (30359591)
宮入 陽介  東京大学, 大気海洋研究所, 特任助教 (30451800)
坂本 竜彦  三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (90271709)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード根室半島 / 根釧台地 / 海成段丘 / 高分解能地形面編年 / ルミネッセンス年代測定法 / 地形発達史
研究実績の概要

本研究では,北海道東部,根釧台地の海成段丘を対象に従来とは異なる年代測定手法であるルミネッセンス年代測定法を適用し,中期更新世以降に形成された海成段丘の高分解能な地形面編年を行うとともに,段丘面上の二次的な地形改変作用の時代性や要因も明らかにする.これらの絶対年代に基づく中期更新世以降の海成段丘群の地理的広がりと離水年代から,地殻変動史と総合的な地形発達史の関係を解明するものである.
令和5年度には,主に海成段丘面の地形・地質調査を行ない,記載と試料採取を行った.野外調査にあたっては,海成層のみならず被覆層の記載も行った.室内実験では,pIRIR年代測定を中心に複数試料の年代測定を行うとともに,放射性炭素年代測定,指標テフラの各種分析も併せて行ない,地形発達史・堆積史・堆積環境に関する分析を行った.
以上の結果,根室半島西部の標高15 m前後に広がる海成段丘面がMIS 5に対比された.また,落石地域周辺に発達する標高約30~40 mに分布する海成段丘面の一部は,MIS 7以前に離水したことが確認された.花咲地域ではMIS 5と考えられる海成砂礫層をLGMに堆積したと考えられる周氷河性の角礫層が被覆することが明らかとなった.落石地域の海成段丘面の内,丘陵化が進む地域では地表面にアースハンモックや条線土などの現成と考えられる周氷河性微地形が分布することが確認され,かつて強力な周氷河環境下に置かれたことや,中期完新世以降に周氷河性微地形が形成されたことが明らかとなった.これらの結果から,根室半島の地殻変動傾向と,周氷河作用による海成段丘面の二次的地形改変の時代性について,絶対年代などに基づき確認された.これらの成果の一部は,学会で発表されたとともに,根室での講演会および出前授業を通じて地域に還元された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

令和3年度に予定されていた海成段丘上での機械式ボーリングコア掘削や一部の野外調査・室内実験が,新型コロナウイルスによる社会情勢の変化のため遅延したことが要因である.令和4~5年度に,概ね当初予定していた実施計画通りに研究が進行したことに加え,令和3年度から遅延していた実施項目も行われたが,特に得られたデータの各種解析やそれら結果の解釈,補備的な年代測定に関する実験がやや遅れている.
令和5年度には,過年度に計画されて遅延していた複数回の野外調査が実施された.その後も地形・地質調査と露頭での試料採取は予定通り行われ,採取試料を用いたpIRIR年代測定・指標テフラの分析などの室内実験についても,令和3年度に実施されなかった項目も含め概ね計画通り行われた.特にルミネッセンス年代測定と放射性炭素年代測定の適用結果は議論に必要な点数が得られている.一方で,ルミネッセンス年代測定法の適用にあたっては,より高分解能な年代値を提示するために実験条件の検討などのため来年度も継続的に同一試料を用いた測定作業が必要な場合も認められた.
以上の進捗状況に基づき,若干の遅れが生じているといえる.

今後の研究の推進方策

最終年度には,上半期までは試料の分析を継続するとともに,補備調査をおこなう.補備調査では,模式地においてドローンを用いた写真測量を合わせて行う.同時に,随時令和5年度からの継続的な複数回の室内実験作業を行い,放射性炭素年代測定法とルミネッセンス年代測定法により多点の直接年代値を得るとともに,地層中に含まれる指標テフラの対比を行い,これらの編年情報に基づいて堆積年代・地形発達史を明らかにし,地殻変動史推定のための基礎資料とする.ルミネッセンス年代測定法の適用にあたっては,補備的な検定測定(ドースリカバリーテストなど)を行い,各種実験条件の確認などを最終的に行う.これらの結果に基づき,海成段丘の編年データと測量結果に基づく垂直変異速度の算出をおこなう.下半期は,成果を地形発達史的手法で取りまとめ,海成段丘の離水年代に基づく根室半島周辺の中期更新世以降の地盤運動の傾向と変化・それらの時代性についてとりまとめる.

次年度使用額が生じた理由

過年度に新型コロナウイルスの社会情勢により調査・実験・学会参加の出張回数が抑制されたことに加え,令和4年度に掘削した機械式ボーリングにあたっては当初3地点以上を予定していたが,掘削費用高騰のため2地点となったことによる.
最終年度は,補備調査および過年度からの継続的な室内実験により適正かつ効果的に配分金額を執行し,研究計画を遂行する.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Radiocarbon dating of wetland sediment from the Konsen Plateau, eastern Hokkaido, Japan2023

    • 著者名/発表者名
      Tsuneoka Ren、Yokoyama Yusuke、Sakashita Wataru、Ota Kosuke、Miyairi Yosuke、Kondo Reisuke、Yokochi Minoru、Kaneko Kazuhiro、Inoue Takashi、Kito Norio、Uemura Kyota、Sumita Mari、Momohara Arata、Fujita Hiroko
    • 雑誌名

      Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B: Beam Interactions with Materials and Atoms

      巻: 536 ページ: 67~71

    • DOI

      10.1016/j.nimb.2022.12.021

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 根室半島西部,落石岬周辺における条線土の記載と層序2024

    • 著者名/発表者名
      近藤玲介,澤田結基,高野建治,井上 京,山本忠男
    • 学会等名
      2024年日本地理学会春季学術大会
  • [学会発表] 天然および人工放射性核種を用いた表層泥炭の高時間分解能年代測定2023

    • 著者名/発表者名
      常岡 廉 ,太田耕輔,宮入陽介,近藤玲介,横山祐典
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2023年大会
    • 国際学会
  • [学会発表] 鉛-210法に基づく北海道東部湿原における泥炭の炭素固定速度の推定2023

    • 著者名/発表者名
      常岡 廉,坂下 渉,近藤玲介,横山祐典
    • 学会等名
      日本第四紀学会2023年大会

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公開日: 2024-12-25  

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