研究課題/領域番号 |
21K01022
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山内 昌和 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (90415828)
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研究分担者 |
佐藤 英人 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (00396798)
久井 情在 国立社会保障・人口問題研究所, 国際関係部, 研究員 (10832058)
江崎 雄治 専修大学, 文学部, 教授 (40282503)
小池 司朗 国立社会保障・人口問題研究所, 人口構造研究部, 部長 (80415827)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人口分布 / 地方圏 / 都市 / 農村 / 地理情報システム |
研究実績の概要 |
本研究では、地方圏を対象として、近年の人口分布がどのように変化し、現在どのような特徴を持つのかを明らかにするために、1990年代以降の市町村および 市町村よりもミクロな地域を単位とする地方圏全体の人口分布を、人口学的なメカニズムを踏まえて検討するものである。そのために、都道府県別や市区町村別 単位の分析、市区町村よりもミクロな地域単位で農村及び都市の内部の人口分布変化を分析することが本研究の具体的な課題となる。 2022年度については、整備済みのデータを用いた分析を進めるとともに、現地での詳細なインタビュー調査の実施が困難であったために、前年度に引き続き英語圏の重要文献の収集と知見の整理を進めた。分析については、各担当者がそれぞれのテーマに即して分析を進めており、主にマクロ的な観点からの近年の人口変動についての知見が得られつつある。また、ミクロな分析については、探索的な試行錯誤を進めている段階であり、コロナ禍の影響を踏まえてインタビューの実施を含む詳細な現地調査は断念したものの、探索的な現地観察なども実施した。それらを踏まえて東京地学協会の学術誌である『地学雑誌』での特集号の企画に向けた構想についても検討を進めた。重要文献の収集と知見の整理については、とくに重要度が高いと考えられるものについては翻訳を進めることにし、具体的な作業に入っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
データ分析についてはおおむね順調といえる。とくにマクロデータを利用した近年の人口分布や人口移動傾向の分析については知見が得られつつあり、その一部は学会報告や論文の形で公表に至ったものもある。例えばコロナ禍の人口移動は、当初予想していたほどには地方圏の人口に影響していないように見受けられ、主に東京大都市圏に一極集中する構造は続いている。その他、外国人の動向、地方都市での住宅供給が及ぼす人口分布への影響、市町村合併が人口分布に及ぼした影響などの研究を進めた。地理情報システムを用いたミクロな分析については、分析手法の検討を含めて試行錯誤しながら分析を進めている段階であり、こちらについては明確な知見にまでは至っていない中で少しずつ基礎的な知見を蓄積しているところである。ただし、2020年国勢調査の地域メッシュ単位での小地域集計のデータ整理は、他の課題を優先したこともあってまだ済んでおらず、こちらについては早急に進める必要がある。 方法論的な検討を含めて日本の状況を位置づけるために英語圏の文献を整理したところ、示唆するところの多い書籍については翻訳して知見を共有するべく、その作業を進めた。その関連で、方法論的な話題の一部を学会報告した。
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今後の研究の推進方策 |
第1にデータ整備については、2020年国勢調査の小地域集計のデータ整備を共同研究者と共有できる形で実施する。 第2に、都道府県別と市区町村別に地方圏の人口分布変動の特徴を2020年国勢調査の結果を踏まえて検討することである。その成果については、現在のところ、本科研の代表者と分担研究者は東京地学協会の学術誌である『地学雑誌』での特集号での企画に関連した論文執筆を予定しており、本年度中に取り組む予定である。また、当初地方圏として想定していたのは三大都市圏とその隣接地域を除く30道県であったが、隣接地域の一部も地方圏として研究対象に組み入れる予定である。これは、三大都市圏の隣接地域までを地方圏とすることで、地方圏内の差異をより明確にできると考えるからである。 第3に、フィールド調査の実施である。対象としては、地方圏の農村と都市をそれぞれ想定している。前年度は明確な形で調査実施はできなかったものの、今年度は上記の分析結果を踏まえつつ、統計的な知見の背後にあるメカニズムを明確にするための有識者へのインタビュー等が中心になる予定である。 第4に、当初予定していなかったため可能な範囲での取り組みになるが、方法論について整理する中で英語圏の重要文献を改めて認識することになったため、翻訳作業を進めるとともに、データ分析から得られた知見をグローバルな観点から相対化することにも取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大によりフィールド調査の実施ができず、学会参加のための出張も対面での開催が中止されために不要となったことに加え、データ 整理のためのアルバイト雇用も困難で各研究者が分担して対応したことで、当初の予定に比べて執行額が少なかった。今年度は、フィールド調査を実施すること、一部の分析作業でアルバイトを雇用予定であること、研究成果報告のために学会へ参加する予定があること、必要な文献の入手を進めること、成果報告のために校閲を依頼すること等のために必要な支出を予定している。
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