研究課題/領域番号 |
21K01024
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
西森 基貴 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, グループ長 (40282305)
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研究分担者 |
菅野 洋光 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 再雇用職員 (30355276)
吉田 龍平 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (70701308)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | キリバス共和国 / ラニーニャ現象 / 降水量変動 / 衛星観測データ / 気候モデル予測 |
研究実績の概要 |
キリバス共和国の気象観測所で観測された降水量は、5ヶ月前までのSSTに対して統計的に有意な正の相関を示していることから、なぜこのようにSST 変動が降水量変動に先行するのだろうか?という問いに対し、NINO.3海域のSSTを用いた降水量変動予測の実用性について明らかにする研究を継続した。 令和3年度に引き続き、オンラインで取得できるBetio観測所の降水量とNino.3海水面温度偏差およびその関係の監視を継続した結果、Betioの降水量は雨季・乾季とも降水量が例年より少ない傾向が続いていたが、2023年3月に、平年比としてはやや上昇に転じた。気象庁は、研究開始年の2021年から発生していたラニーニャ現象は2023年1月をもって終息した、と発表している。降水量変動が真にエルニーニョ/ラニーニャ現象に関係しているか、令和5年度開始当初に解析し、見極める必要がある。 またオンラインで入手できた観測点が1点であり、依然としてその地域性や広域代表性に不確実性が残ることから、全球気候モデルによるインドネシアからキリバス共和国全域を含む赤道西太平洋地域の降水量データの解析を、令和4年度は最新のIPCC第六次報告書のCMIP6モデルについても行なった。全球気候モデルによるこの地域の降水量の再現性は、複雑な海陸分布を反映し、モデル間の相違がみられたが、その傾向は気候モデル開発機関ごとにほぼ同一であることが分かった。つまり、日本の気象庁気象研究所のMRIモデル系列、および東京大学等のMIROCモデル系列で、降水量の再現性がそれぞれのモデル系列内ではほぼ類似しており、いっぽう異なるモデル系列間では大きく異なっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響により、令和3年度に引き続きキリバス共和国への渡航が出来ず、総合気象観測装置による独自測定、および現地気象局等が持つ他の観測降水量データが入手できない状態にあることから、オンラインで入手出来るBetio観測点の降水量の信頼性が依然として確保できず、(3)やや遅れている、と判断せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
キリバス共和国および乗り継ぎ先における入国制限が緩和され、安全な渡航が見込めると判断された時点で、速やかに現地に渡航し、総合気象観測装置の設置と、降水量測定に影響する周辺環境の調査を行う。また令和4年度に引き続き、衛星観測データを用いた降水量分布の地域性の検討、および全球モデル出力を用いた気象モデルの再現性の検証を行う。 さらに気象庁により配信されているエルニーニョ監視海域SST予測データを用い、降水量変動の統計予測実験を行う。具体的には、現地気象観測データ、衛星観測データ、客観解析気象データ、およびSST 予測データ等を変数とする統計モデルを基にした天候予測プロトコルを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
R3年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響によりキリバス共和国への渡航が出来ず、総合気象観測装置による独自測定、および現地気象局等が持つ他の観測降水量データが入手できない状態にあることから、現地渡航のための外国旅費と総合気象観測装置購入のための設備備品費に剰余が生じている。R5年度には、現地渡航が可能と判断された時点で、気象観測装置を購入するとともに、外国旅費を現地アテンダント代を含めて使用する。
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