研究課題/領域番号 |
21K01027
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
村山 祐司 筑波大学, 生命環境系(名誉教授), 名誉教授 (30182140)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 発展途上国 / 都市化 / 将来予測 / リモートセンシング / GIS / 空間分析 / 衛星画像 / 人文地理学 |
研究実績の概要 |
令和3年度は,分析手法・データ収集・方法論などを体系的に検討し,都市的土地利用・被覆のデータベース構築の設計を行うとともに,目的に合致した衛星画像データのサーベイを行った.とくに,衛星画像解析による都市化研究の動向を探るため,文献調査に精力を注いだ.これまでは,森林地帯や畑作地域といった比較的広域をターゲットにした研究が多かったが,最近では,空間解像度の向上を背景に,都市域レベルや小地域を対象にする実証研究が急増していることがわかった.とくに1970年代初頭から全球データが得られるLandsat画像は,世界の都市化地域の状況を過去半世紀にわたって探究でき,世界各国において都市化研究に重用されていることが文献調査によって明らかになった. 都市化は生態系サービスの低下を招き,ヒートアイランド現象を深刻化させる.そこで,今年度は,Landsatの熱画像(熱赤外バンド)から地表面温度を導出し,その分布パターンの変化と土地利用パターンの変化との関係を探った.スリランカのコロンボ都市圏,ネパールのカトマンズ都市圏,インドのバンガロール都市圏などを対象に,都市化に伴う地表面温度の変動について,考察を行った.その結果,1)市街地が郊外に拡大するにつれ,地表面温度が高いエリアも同時に外側に広がっていく,2)ヒートアイランドの形成は,建築物や植生の分布に加え,人口密度,化石燃料による二酸化炭素(温室効果ガス)の放出量とも密接に関係することがみいだされた.途上国のメガシティでは,今後,経済活動がより活発化し,都市化が水平的にも垂直的にも進んでいくと,ヒートアイランドのエリアは空間的に拡大するだけでなく,中心部と周辺部の間で地表面温度の較差も広がっていくことが予想される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
都市化の実態調査を実施することを計画していたが,コロナ渦による感染症拡大のため当初の計画を変更した.また,衛星画像データのGIS解析及び可視化のため,大学院生の短期雇用を予定していたが,感染症の拡大により取りやめた. 参加を予定していた学会がオンライン開催になったため,現地に出向くための旅費は使用しなかった.文献調査およびGISによる実証分析に切り替えた. これらの点以外は,ほぼ計画通りに研究を遂行できた.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,人口が急増する途上国のメガシティを対象に,衛星画像解析により,都市域の水平的・垂直的拡大,土地利用の機能的分化,都市化の将来などを科学的に究明することをめざし,その方法論と分析枠組を確立することを目的に据えている.精緻な予測モデルとシナリオ分析法を開発し,持続可能な都市発展に資する施策を提案することを課題とする.具体的には,1)高精細な衛星画像をデータとして,RS/GIS分析により都市的土地利用の変容を,水平的かつ垂直的に可視化するとともに,2)複雑系科学を援用した空間プロセスモデルを開発し,3)シナリオ分析を駆使して将来の都市構造を予測することをめざしている. 次年度は,衛星画像を活用した都市化の実証分析と将来予測,シナリオ分析などに集中し,都市化研究のフレームワーク構築に努める.今日,機械学習モデルが脚光を浴びており,GISに機械学習モデルを組み込んだ空間分析,すなわち“GIS with Machine Learning”を効果的に活用すれば,空間予測にとどまらず,空間制御や空間管理の領域でも,都市化研究に存在感を示せるに違いない.空間予測モデル,遺伝的アルゴリズム,セルオートマータ,ニューラルネットワーク,エージェント・モデルなどを駆使したシミュレーション解析は,その有力な武器になる.これからの都市地理学は,都市形成のプロセスやメカニズムを究明するだけでなく,シナリオ分析を通して,都市計画や都市政策の意思決定にも積極的に関与することが期待される.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由 当初予定していた地域調査や短期雇用による衛星画像データ解析が,コロナ渦により実施できなかったため. 使用計画 投稿論文の掲載料,地理学関係の国際会議への参加費の支出などに振り替え予定である.
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