研究課題/領域番号 |
21K01029
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
武者 忠彦 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (70432177)
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研究分担者 |
大呂 興平 大分大学, 経済学部, 教授 (50370622)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地方都市 / 都市のスポンジ化 / ライフコース / 家産継承 |
研究実績の概要 |
本研究は,地方都市で問題化している「都市のスポンジ化」がどのように進行しているのか,そのメカニズムを「世帯のライフコース」の視点から明らかにすることが目的である。従来,都市のスポンジ化は空き家研究の延長線上で論じられてきたが,その実態を明らかにするためには,現代の地方都市の社会経済的文脈をふまえた分析,他の低未利用地も含めた分野横断的な分析が不可欠である。そこで本研究では,都市のスポンジ化を単なる土地・建物のランダムな低未利用化ではなく,社会経済的文脈に規定された世帯のライフコースにおける家産継承の失敗と捉えた。 2021年度は,調査対象地域を選定するために,全国の地方都市を対象に小地域統計を利用して人口や産業の動向を詳細に把握し,その結果をふまえて,大分市および長野市において家産継承パターンの実態についてのパイロット的な調査を実施した。小地域統計については,国勢調査(1995/2015年)の「小地域集計」および経済センサス基礎調査(1996/2016年)の「町丁・大字別集計」を用いて,人口および事業所数の推移を分析した。その結果,多くの地方都市では,中心市街地において人口や産業の空洞化が顕著であったが,郊外においても人口と事業所数の減少が進行し,スポンジ化が都心部だけでなく,郊外の集落や住宅地でも進行していることが示唆された。さらに,長野市中心市街地および大分市郊外のいくつかの地区において,家屋台帳と住宅地図を用いた現況調査や聞き取り調査を実施し,土地・建物が放置型,現状維持型,資産活用型の3パターンに類型化されること,それらは家族構成や家業の経営状況,親世帯と子世帯の居住関係などに規定される可能性があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度に予定していた小地域統計などのデータを扱う分析はおおむね予定通りに実施できたが,集落における家産継承に関するパイロット的な聞き取り調査は,調査対象に高齢者も多く,新型コロナウィルスの影響により,十分な数を実施することができなかった。これらの調査については2022年度に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度のパイロット調査をふまえて,2022年度は調査対象地区の全世帯および土地・建物所有者を対象に,対面式アンケート調査(不在地主等については郵送式)を実施する予定である。新型コロナウィルスの状況によっては,すべて郵送式に変更するなどの対応策を講じる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により,当初計画していた聞き取り調査の一部が実施できなかったことに加え,研究メンバーが信州大学と大分大学に所属し,県境を越える移動が制限されていた時期に研究打ち合わせが実施できなかったため。
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