研究課題
本研究では、都市の持続可能な移行(UST)論に依拠し、UST研究の分析枠組の1つであるマルチレベルの視点(MLP)を用いて、令和4年度には、主に統計データを用いて調査対象地域を決定することを目的とし、以下のような研究計画を立てた。まず予備調査で、OECDや欧州統計局等の統計を中心に、スウェーデン・連合王国等の政府の統計も活用しつつ、運輸部門の技術革新地域でもある調査候補地域を、これらの対象国ばかりでなく、運輸産業が発達しているドイツ、フランス等の欧州諸国からも複数の候補地を抽出する。つぎに予備調査で抽出した調査候補地から、次年度以降、運輸部門のUSTを明らかにする対象地域を選定するため、調査候補地で現地調査を実施する。最後に、現地調査の結果を踏まえて、候補地を絞り込み、対象地域を選定する。上述した研究計画にそって調査をすすめた結果、予備調査の際に、主にOECDの統計データから、運輸部門での技術革新を表す地球温暖化防止対策と関連する各種の特許数の多い地方自治体が、都市圏に位置することが示唆された。この予備調査の結果をもとに、令和4年8・9月にスウェーデンとイギリスで現地調査を実施するとともに、運輸部門の地域的な気候変動政策の専門家に対して対面調査を実施する一方で、運輸関連政策と関連する資料を収集した。最後に調査後の予察的な分析では、技術革新を表す独立変数として、電気自動車関連の特許数を、レジームを表す従属変数として、地域的な電気自動車保有率を用いた回帰分析を行った結果、レジームへの技術革新以外の要因の影響が示唆され、これらの研究結果の一部を国内の学会で報告した。
2: おおむね順調に進展している
文献調査や現地調査を通じて、研究対象地域選定に必要な資料を収集できたことと、これらの資料を用いた調査後の分析で、技術革新以外の要因のレジームへの影響が示唆される一方で、研究対象地域として都市自治体を選定できたことが評価理由である。
研究計画書にしたがい、令和5年度に、前年度に選定した都市自治体を研究対象地域として、イノベーションの実態に関する研究を進める。これはマルチレベルの視点(MLP)のマクロスケールでの分析にあたる。具体的には、まず前年度までに収集した資料を参照しつつ、現地調査の調査項目を再検討する。ついで、これらの調査項目にもとづく現地調査を通じて、イノベーションの実態を把握したい。
新型コロナウイルス感染拡大にともない、令和3年度全期間に、外務省による渡航中止勧告が現地調査対象国に対して発令されていたことから、当該年度に予定していた現地調査ならびに現地調査後の分析が実施できず、令和3年度分に計画していた研究を令和4年度に実施したため、次年度使用額が生じた。令和5年度には、令和4年度に予定していた計画にもとづいて研究を進め、主に現地調査に係る旅費で助成金を使用する。
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