研究課題/領域番号 |
21K01032
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
藤塚 吉浩 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (70274347)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ジェントリフィケーション / 都市景観 / 歴史的町並み / 高層共同住宅 / 建築紛争 / 家賃の上昇 / 空き家 |
研究実績の概要 |
2021年度は、東京都心周辺部と郊外の埼玉県川口市と草加市における現地調査を行った。東京都心周辺部に関しては、主に次の三点の研究成果を得た。第一に、東京中心部におけるジェントリフィケーションの変化について、管理,専門・技術職就業者数の変化を指標として検討し、2010年代前半には都心から離れた墨田区や荒川区、豊島区などで増加したことを明らかにした。第二に、台東区下谷・根岸における都市景観の変化を検討し、金杉通り沿いに多かった町家と路地に面した長屋の多くが失われ、高層共同住宅が増加したことにより、歴史的な町並みを守ることは容易ではなく、下町の風情をいかに保つかが重要と指摘した。第三に、荒川区東日暮里における高層共同住宅建設に伴う建築紛争について考察し、荒川ルール条例による地域関係者会議における協議によって、近隣への影響が緩和されたことを示した。今後ジェントリフィケーションが拡大すると、周辺地域に立地する産業の操業環境との調和をどのように実現できるか検討が必要となる。 また、ニューヨーク市ブルックリンにおけるジェントリフィケーションの変化について、統計資料を用いて研究した。1990年代のマンハッタン南部における家賃の上昇が、2000年代のブルックリン北部におけるジェントリフィケーション進行の要因であることを示した。 さらに、2020年の統計を用いて、ロンドンのインナーシティについて検討し、サザクや、ニューアム、ルイシャム、ハクニー、カムデンでは、6カ月以上居住のない空き家が多いことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニューヨーク市におけるジェントリフィケーションの変化について、統計資料を用いて調査した成果は、『新地理』第69巻2号に「ニューヨーク市ブルックリン北部におけるジェントリフィケーションと地誌学習」として掲載された。 また、「ロンドンのインナーシティ問題」と「ニューヨーク市のジェントリフィケーション」については、『図説 世界の地域問題 100』ナカニシヤ出版に、研究成果の一部を掲載した。 さらに、東京都心周辺部において現地調査を行った研究成果は、『都市地理学』17号に「東京都心周辺部におけるジェントリフィケーションと都市景観の変化-下谷・根岸・東日暮里を事例に-」として掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、2020年の国勢調査の結果を利用して、東京都心周辺部および東京の郊外において、都市再生の現地調査を行う。感染症拡大防止に関して入国時の水際対策における隔離期間が短縮され、海外調査に赴くことが容易になれば、ニューヨーク市において都市再生動向についての現地調査を行う。調査研究の成果については、日本地理学会の春季学術大会において報告する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染症拡大防止のために、長く緊急事態宣言が出され県境を越えた移動を控えるようにとの要請があり、頻繁に現地調査に行くことができなかった。2022年度は、現地調査の頻度を上げて、研究内容を深める計画である。
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