研究課題/領域番号 |
21K01032
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
藤塚 吉浩 大阪公立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (70274347)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ジェントリフィケーション / 高層共同住宅 / 専門職就業者 / アフォーダブル住宅 / 家賃 |
研究実績の概要 |
2023年度は、ロンドンとニューヨークについて現地調査を行うとともに、ジェントリフィケーションの研究動向に関して展望論文をまとめた。 ロンドンについては、National Statisticsにより、2011年から2021年までの職業別就業者数の変化を指標として検討したところ、タワーハムレッツの東部・南部とニューアムの西部において、専門職就業者の顕著な増加が見られた。これに関して、タワーハムレッツの東部・南部とニューアムの西部において現地調査を行い、主に次の三点の研究成果を得た。第一に、専門職就業者の増加したところについて詳しく分析すると、リー川沿いおよびライムハウスカットなどの水路に面していることがわかった。第二に、水路沿いにある工場跡地の多くに、高層共同住宅が建設されたことを明らかにした。第三に、リー川下流のボウクリーク沿いのところは、地下鉄・ドックランズライトレイル駅からの架橋により公共交通機関利用の利便性が高くなり、そこに建設された高層共同住宅の住戸は、高価格で販売されていることがわかった。 ニューヨークについては、2008-2012年から2017-2021年までの総家賃中央値の変化をみると、マンハッタン南部のソーホー、ブルックリンのブルックリンハイツと、ウィリアムズバーグおよびグリーンポイントでは、700ドル以上上昇した。そこで、ブルックリン北部のウィリアムズバーグおよびグリーンポイントにおいて現地調査を行った。グリーンポイント北部のイースト川沿いの地域では、多くの高層共同住宅が建設されたことがわかった。アフォーダブル住宅を供給する共同住宅建設には、許容容積率が付加される。これにより供給される住宅の多くは低所得世帯向きではなく、中所得以上の世帯向きの家賃である。イースト川沿いのウィリアムズバーグでは、公園の整備とともに、ホテルが建設されたことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロンドン東部における現地調査を行った研究成果については、日本地理学会秋季学術大会にて報告するとともに、大阪公立大学商学部公共経営学科編『公共経営序論』に「大都市衰退地区の再生-ロンドン東部を事例として-」としてまとめた。また、ニューヨーク市ブルックリン北部における研究に関しては、日本地理学会春季学術大会にて報告した内容をもとに、研究論文としてまとめる計画である。ジェントリフィケーションの研究動向に関しては、『都市問題』114巻に「日本のジェントリフィケーション研究の展開」の論文としてまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2020年の国勢調査の結果を利用して、東京都心周辺部において、都市再生の現地調査を行う。ニューヨーク市における現地調査の結果について、研究論文として取りまとめを行う。調査研究の成果については、人文地理学会大会において報告する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に実施したロンドンおよびニューヨークの現地調査では、燃油代の高騰と円安により、調査費用が非常に高くなっていた。予算残額を有効に活用して海外調査を実施するために、翌2024年度に残額を繰り越すこととなった。これにより2024年度には、補足調査を含めた現地調査を遂行できる計画である。
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