研究課題/領域番号 |
21K01035
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
出田 和久 京都産業大学, 文化学部, 教授 (40128335)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 耕地拡張 / 開墾助成法 / 開墾地移住 / 耕地整理法 / 耕地整理組合 / 食糧増産 |
研究実績の概要 |
必要な資料や文献の収集を進めるとともに、耕地拡張に関する動向を把握するために、一部ではあるが基本的な統計データの整理分析を進めた。 その結果、例えば1909(明治42)年4月の耕地整理法の大改正および1919(大正8)年の開墾助成法の施行により、耕地整理の事業項目に開墾・開田が加えられ灌漑排水工事とともに行い得ることとなり、耕地の拡張・改良事業が多様に展開され、開墾事業者として耕地整理組合が大きな役割を果たすようになったことが確認できた。また、開墾助成法による助成期間における耕地面積の動向をみると、1930(昭和5)年までは田は概ね年間数千町歩増加し、畑は拡張、潰廃ともに田の数倍に上り3万町歩の減から2万町歩の増と変動が激しいこと、田の拡大は1万町歩前後で、1935(昭和10)年以降は漸減することが分かった。 また、昭和初期には国の一般会計予算の2割前後を占めた農林省の予算の内、開墾助成および開墾地移住奨励補助金関係が4割から5割、耕地整理関係が5乃至6%を占めたにもかかわらず、耕地拡張見込地面積約120万町歩(除く、北海道)に対して開墾地助成による耕地拡張が約11万町歩にも達しなかったことに関して、断片的ではあるが収集した資料から個々の事業についてその規模をみると概して小規模であることもその一因であると推測された。 現段階は各種資料の収集整理の過程にあり、covid-19感染症の流行により予定していた調査や資料収集が実施できなかったが、佐賀県公文書館などにおいて予備的調査が実施でき、一部ではあるが耕地整理および開墾助成を中心に国庫補助事業関連の助成申請に関連する資料が存在することが判明したことは、調査が十分に実施できない中では大きな成果であった。 また、国会図書館のほか公文書館資料のデジタル化の進展により資料収集が可能な領域が拡大した恩恵は大きかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
明治後期~昭和前期における関係する時期の資料は、多くが70年以上経過していることもあり、『耕地拡張改良事業要覧』、『耕地整理要覧』類をはじめ農商務省や府県の耕地整理や開墾助成など、主として公的機関が発行した資料の多くが国会図書館デジタルコレクションとしてデジタル化され公開されていることから、これらを中心に関連資料、文献をリスト化し、可能なものについてはダウンロードを進めた。さらに、関係県の『土地改良史』類などの関連書籍の収集を行った。このほか、明治期~昭和前期における植民地、特に朝鮮半島における食糧増産政策に関する文献の収集を進めた。これらはほぼ予定通りに進んだ。 耕地整理や開墾助成および開墾地移住奨励が国庫補助事業として行なわれたので、より詳細・具体的な資料を求めて関係県(当初予定は東北・中国・九州地方)の公文書館等において関連の資料を探索し、さらに、現地において資料の存否をはじめ予備的な調査をする予定であったが、コロナ感染症の収束がみられずかなりの部分が未実施に終わった。ただ、感染状況がかなり改善された2021年12月に文書資料のデジタル化が進んでいる佐賀県公文書館および佐賀県立図書館において予備的調査が実施できたことは幸いであった。耕地整理および開墾助成を中心に国庫補助事業関連の助成申請に関連する資料が存在することが判明したことや、当該資料に関連する現地の踏査と白石町役場における若干の調査で得られた資料や経験は、今後の調査・研究にとって大いに参考になった。
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今後の研究の推進方策 |
1.収集した統計資料を中心にデータの整理およびExcelを利用して入力を進め、図表化し、具体的な分析を行う。 2.今後コロナ感染症が収束するか否か不透明な状況であるが、公文書館などが開館していれば感染状況が好転した際に、時期を逃さず万全の感染対策を施したうえで資料調査が行えるように普段から準備をしておき、現下の状況に対応できるようにする。 3.必要資料を古書で入手せざるを得ないものが多々あり、シリーズ本で全巻購入を求められるケースが昨年度あり、予算上負担が大きくなるため購入を見合わせたが、このような場合には所蔵図書館での閲覧、必要部分の複写により対応することにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19感染症の蔓延のため、開墾助成や開墾地移住および耕地整理に関連する詳細な資料(助成申請などの一次資料かそれに近い資料)を関係県(当初予定は東北・中国・九州地方)の公文書館等および現地において探索し、予備的な調査も実施する予定であったがCovid-19感染症の状況が芳しくなく、佐賀県において実施したのみであった。そのため旅費の未使用額が大きくなった。 また、古書で資料を購入することが多かったが、予定より安価で購入できた一方で、シリーズ本の一部の巻を購入する予定であったが、全巻購入を求められ購入を断念したこと、必要な古書が流通していないことなどがあり、大幅な次年度使用額が発生した。 今年度はできるだけ早い時期から調査計画を立て、感染状況が好転した際に速やかに調査が実施できるように準備を進めることで、前年度に実施できなかった調査を含めてできるだけ調査を行う。また、必要な書籍の選定と購入をできるだけ早い時期に実施する。
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