研究課題/領域番号 |
21K01051
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
水野 真彦 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 教授 (80305664)
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研究分担者 |
長尾 謙吉 専修大学, 経済学部, 教授 (50301429)
立見 淳哉 大阪公立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (50422762)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 経済地理学 / 地理的環境 / 産業転換 / 産業高度化 / 市場創造 |
研究実績の概要 |
変化の激しい現代経済において,先進国の都市・地域では,産業を自ら変化させ,その市場を維持ないし拡大させることが求められている。本研究は,産業の転換・高度化,市場創造と地理的環境について経済地理学的視点より考察するものである。 本年度の成果の第一は,英語圏において近年盛んに研究が行われているグローバルバリューチェーン(GVC)やグローバル生産ネットワーク(GPN)の議論を検討し,領域の内部に焦点を当てる集積・クラスター論との補完的関係について考察することで,グローバリゼーションとローカリゼーションの相克の視点から産業転換・高度化を理解する地理学的フレームワークを構築を試みたことである。 第二は,地理的近接性,制度的近接性などの「近接性(proximity)」概念について,フランスの近接性学派の議論を中心に,オランダのBoschmaらの進化経済地理学グループとの間の「認知的近接性」定義の差異など様々な点について検討し,社会-空間弁証法の観点から経済地理を捉える枠組みとしての「近接性」概念の有用性について考察した。この近接性概念は,産業の転換・高度化や市場創造がいかに空間的に行われるかの分析において鍵となるものとなると考えられる。 第三の成果は研究分担者である立見淳哉によるもので,フランスにおける連帯経済および「豊穣化の経済」による市場創造に関する調査(具体的にはパリのアート産業)を行うと同時に,フランスの理論研究者との交流を行った。これらで得られた知見は,「市場」を与件とするのではなく,それが創造されるプロセスを考察する上で重要となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究レビューおよび研究枠組の構築については順調に進んでいる。しかし,時間がとれる大学の夏季休暇期間中(2022年8月)における新型コロナ感染拡大でフィールド調査がしにくかったことなどもあり,実証研究については遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
調査は,産業の転換・高度化に関するものと市場創造・価値づけに関するものに分けられる。これまで蓄積してきた近接性や価値づけの議論や,ローカルな需要の深耕の意義などの論点を盛り込みながら,独自性のある研究を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により,フィールドワークが困難であった期間が長く,特に実証研究の進捗が遅れがちとなったため。
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