研究課題/領域番号 |
21K01054
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
深澤 秀夫 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (10183922)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 社会人類学 / マダガスカル地域研究 / 民衆暴力 / 現地民司法制度 / 成文法と慣習法 / 再帰性 |
研究実績の概要 |
2022年度は、マダガスカル北西部のマジュンガ地方の都市と農村の双方において、民衆や地域住民が拘束した犯罪被疑者を治安機関へ拘引せずに肉体的制裁を加える<民衆裁判>(fitsaram-bahoaka)と呼ばれる「民衆暴力」に関する事例および発生状況の資料を、対面調査に基づいて収集した。北西部地方の住民から、hala-botyと呼ばれる「民衆裁判」や刑事罰あるいは村会における損害賠償請求の対象とはならない農産物等の<軽い盗み>について、その内容物及び行為者の属性等についての情報を収集した。 また、コロナ禍により海外調査のできなかった2021年度に引き続き、インターネット上に公開されたマダガスカル現地の新聞等の情報から「民衆裁判」の事例を収集し、その対象者と実行者、発生場所と状況、発生理由について収集と記録を行った。 牛等の略取、家財や農産物等に対する窃盗、家宅侵入の行為者を住民が現場で検挙した際に発生した事例が依然として<民衆裁判>例の大多数を占めたものの、死傷者を出した重大交通事故において当該車両の運転者が<民衆裁判>の対象となった例も引き続き見出された。 2022年8月、東南部の Fitovinainy地方圏にあるIkongoの町において、母親を殺害しそのアルビノの子供を奪った疑いで憲兵隊に拘束された男性4人を<民衆裁判>にかけるために、殺害された女性の親族や村の代表を含む鉈をも手にした民衆がその身柄の引き渡しを求めて憲兵隊駐屯所近辺に集まり、憲兵隊の制止を顧みず侵入を試み投石した結果、憲兵隊側が民衆に対して催涙弾と実弾を発射し、即死者11人、重傷者18人をだす事件が生じた。この事件に見られるように、民衆暴力と国家権力との緊張関係は依然として高く、再帰性の観点からの考察が不可欠であるとの見通しを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年8月に、コロナウィルス防疫措置が日本およびマダガスカルの双方において緩和され、現地調査が可能となった。しかしながら、その時点から航空便やヴィザの手配等を始めた結果、同年11月~翌年1月にマダガスカルでの現地調査を実施する事となった。そのため、雨季の期間と重なって道路状況が悪化し、予定していた農村における対面調査の時間を一ヵ月から一週間へと大幅に短縮せざるをえなくなった。 2021年度の一年間、コロナウィルス感染症により海外調査ができなかった事と併せ、本科研費研究の進捗は当初計画よりも遅れている。 、
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今後の研究の推進方策 |
2023年度および2024年度は、マダガスカル現地における臨地調査の実施に係わる支障の発生は現時点で特に予想されないため、都市部と農村部双方における対面調査による資料収集を中心に、首都アンタナナリヴの国立公文書館および国立図書館等における文献資料収集、さらには国立アンタナナリヴ大学・国立トゥアマシナ大学教員との情報交換や討議を交えながら、本研究を進める予定である。また、ネット上の公開情報に記載された<民衆裁判>の事例の収集も引き続き行ってゆく。 しかしながら、上記で述べた事情により2021年度および2022年度の研究の進捗に遅れが生じているため、本研究の終了年度を2024年度からさらに1年延長する事も検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度コロナ禍により海外調査ができなかった事により未執行額が多く生じそれが繰り越された事に加え、2022年度は複数の科研費を用いてマダガスカルにおける海外調査を行ったため、本科研費に次年度使用額が生じた。 コロナ防疫対策が世界的に緩和もしくは廃止されたため、今年度以降のマダガスカル現地調査の実行に支障はないと判断される上、本科研費研究の終了年度を当初の2024年度から一年延長し、2025年度とするため、今年度以降の予算執行に支障はない。
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