研究課題/領域番号 |
21K01055
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
浅井 優一 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80726860)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 詩作詠唱 / フォークロア / 儀礼的発話 / ことばの民族誌 / 民族詩学 / 言語人類学 / フィジー |
研究実績の概要 |
本研究は、フィジー諸島で実践される儀礼的発話および詩作詠唱に着目し、そこに現れるフィジー語の発話に特徴的な発話形式や様態について詳細に検討すると同時に、それらを植民地期以後の民族誌的状況の中に位置付け、儀礼やフォークロアに現れる言語使用の形式・形態論的特徴が、19世紀後半に始まる英領植民地期に遡る社会文化的秩序の形成と軌を一にして生起したことを明らかにするものである。その上で、今年度は、本研究の調査地であるダワサム地域の住民が従事する詩作詠唱、その言語使用の詳細についての考察を行った。具体的には、当該地域では良く知られた「メケ」と呼ばれるフィジーの伝統舞踊の作詩家 (ダウニヴズ; daunivucu) の末裔が住んでいるナタレイラ村で、その作詩家たちが作った歌詞を記録するとともに、その作詩家たちが、どのようにして作詞をしていたのか、それは当該村落および地域においてどのように歌われていたのかについて、住民たちの語りを収集して調査し、その歌詞と実践の両者を特にミハエル・バフチンの社会文学理論を手掛かりに分析を進めた。さらに、そうした当該地域の詩作詠唱というフォークロアの実践では、詩に顕著に見られるような定型性が明瞭に観察されること、日常的な発話と比較した場合、ダイクシスや相(aspect)の使用に特徴的な変化が観察されること、それらが在地の世界観を直裁に体現することに貢献・作用していることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「メケ」の歌詞とその詠唱実践の両者をバフチンの社会文学理論を基点に架橋することで、その歌詞と詠唱の実践が、全体として、当該地域で有する世界観を体現する形式・形態を有していることを明らかに出来たため。
|
今後の研究の推進方策 |
ダワサム地域の「メケ」の歌詞とその詠唱実践の両者に関するバフチン理論に依拠した分析、および2010年に当該地域で行われた最高首長の就任儀礼で営まれた儀礼的発話の考察をさらに深めるととともに、それらを学会発表や論文投稿を通じて公開する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
申請時に予定していた学会発表の回数を大幅に減らしたため。今後、それらの助成金を使用して学会発表の回数を増やしていく。また、フィジーでの調査にかかる経費に充てていく計画である。
|