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2021 年度 実施状況報告書

社会変容に伴う新たな人格観に関する文化人類学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K01059
研究機関島根大学

研究代表者

福井 栄二郎  島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 准教授 (10533284)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード人格 / ヴァヌアツ / メラネシア / 文化人類学 / 死
研究実績の概要

2021(令和3)年度は、コロナウイルス感染拡大のため、海外調査および国内調査が遂行できなかった。そのため、文献調査のみにならざるを得ない状況であった。
そのなかで「人格(personhood)」概念の学術史的な視点からの再検討を行えたことは有意義であった。とくにストラザーンの「dividual/individual」論に対し、近年では医療・福祉の現場を調査している研究者から、この二項対立を乗り越える論が出始めていることに着目した。
例えばそれは、カウフマンのPVS(遷延性植物状態)患者の研究や、ブッフの高齢者介護の研究などである。そのなかでもバード=デイヴィッドとイスラエリがイスラエルの病院で行ったPVS患者の研究は注目に値する。そのなかで彼女らは「状況的人格(situational personhood)」という概念を提起している。これは単独性に支えられ、個人的なパースペクティヴによって生起する人格である。
こうした研究の視座と、これまでの調査で得られたヴァヌアツ共和国・アネイチュム島の看取りの事例をもとに分析を行った。そこで明らかになったのは、ある個人の死に際して、周囲の者がその人物の語りを量産し、その人の人格が(再)創出されるということである。それは、個人名と土地と親族集団に規定された、社会的な人格とは異なる、より「二人称」的な人格である。
これまで文化人類学において、人格は、「社会」「分類」「特殊性」「循環する歴史」という観点からしか考察されてこなかった。しかし、現在、着目されているのは、むしろ「単独性」や「一回性」に支えられた人格なのであり、今後もますますこの視座が有効となることを指摘した。また今年度の研究は学会等での発表、および論文の執筆(次年度に刊行予定)を行い、その成果を公にした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、コロナウイルスの拡大状況を見越して、当初から調査を行わない方針であった。たしかに調査に赴けないことは、課題研究全体としては不利に働くが「進捗が遅れている」とまでは言い切れない。
また本年度は、学内外で多くの仕事を拝命し非常に多忙であったが、その中で論文の執筆や学会・研究会での発表等を行えたのは有意義であった。こうした点に鑑み「おおむね順調に進展している」と判断した。

今後の研究の推進方策

2022(令和4)年度は、ヴァヌアツでの調査を行いたいと考えている。コロナウイルスの感染拡大状況如何では、調査を実施できないかもしれないが、その時は「死と人格」をテーマにした文献研究を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

本年度はコロナウイルス感染拡大のため、海外調査および国内出張(文献収集・学会発表等)ができなかったため。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 逆輸入されたカーゴカルト:ヴァヌアツアネイチュム島の観光と開発2022

    • 著者名/発表者名
      福井栄二郎
    • 雑誌名

      社会文化論集

      巻: 18 ページ: 13-37

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 死の場面における状況的人格の表出:ヴァヌアツ・アネイチュム島の事例から2021

    • 著者名/発表者名
      福井栄二郎
    • 学会等名
      日本文化人類学会第55回研究大会

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公開日: 2022-12-28  

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