研究課題/領域番号 |
21K01059
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
福井 栄二郎 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 准教授 (10533284)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人格 / ヴァヌアツ / メラネシア / 文化人類学 / 死 |
研究実績の概要 |
2022(令和4)年度は、コロナウイルス感染拡大のため、海外調査および国内調査が遂行できなかった。そのため、文献調査のみにならざるを得ない状況であった。 そのなかで「人格(personhood)」概念の学術史的な視点からの再検討を行えたことは有意義であった。とくにストラザーンの「dividual/individual」論に対し、近年では「死」をテーマとして、この二項対立を乗り越える論が出始めている。つまり、デグネンが論じるように、多くの社会において死は再生や転生の契機と捉えられており、死者の人格を認めることがある。また西洋社会においても、フランシスの墓地研究のように、生者と死者を連続したものとして捉える研究もある。 昨年度に明らかにした「状況的人格論」を踏まえ、2022年度はこの「死と人格」に関する議論に着目した。これまで申請者は、調査地(ヴァヌアツ・アネイチュム島)に「人格」と、それを支える「歴史」が併存するということを主張してきた。それは「一回性の歴史」に支えられた「単独性」としての人格と、「循環する歴史」に支えられた「特殊性」としての人格である。本年度はこの前者に関して集中的に分析を行った。 アネイチュム島はキリスト教化がされるまで、死体は海に遺棄されていた。魂はまたこの世に戻ってくるとされ、身体はその「容器」でしかなかった。だが19世紀なかばのキリスト教化以降、「個人墓」が作られるようになった。また近年では、近親の死をSNSなどに掲載し、故人を偲ぶ風潮もある。これらは、歴史に一回だけ現れる単独性の人格を想起する実践だと考えられる。 今年度の研究成果は学会・研究会等で発表を行い、また学術論文で執筆(次年度に刊行予定のものもあり)することにより公にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、コロナウイルスの影響により課題研究全体としては不利に働くが、その分基礎研究・文献研究が進んだため「進捗が遅れている」とまでは言い切れない。 また本年度は、学内外で多くの仕事を拝命し非常に多忙であったが、その中で論文の執筆や学会・研究会での発表等を行えたのは有意義であった。こうした点に鑑み「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023(令和5)年度は、ヴァヌアツでの調査を行いたいと考えている。コロナウイルスの感染拡大状況如何では、調査を実施できないかもしれないが、その時は引き続き「並存する人格」をテーマにした文献研究を行う予定である。また研究成果の学術出版に向けても準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナウイルス感染拡大のため、海外調査および国内出張(文献収集・学会発表等)ができなかったため。
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