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2023 年度 実績報告書

社会変容に伴う新たな人格観に関する文化人類学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K01059
研究機関島根大学

研究代表者

福井 栄二郎  島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 准教授 (10533284)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード人格 / ヴァヌアツ / オセアニア / 想起 / 死
研究実績の概要

本年度は最終年度ということもあり、成果報告に注力した。新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響のため、当初予定していたヴァヌアツでのフィールドワークを実施することはできなかったが、これまでに得られたデータと文献研究により、より新たな展開を生み出すことができた。
昨年度までに明らかにした通り、彼らの人格は社会的な人格(特殊性)と、代替不可能性としての人格(単独性)に大別することができる。そして前者は循環する歴史観に、後者は一回性の歴史観に支えられている。
ただし両者は離接的なのではない。本年度は、両者が再帰的に影響し合っていることを明らかにした。具体的にいえば、墓、遺品、SNSなどを通して、ヴァヌアツの人々は死者を思い出す。そこで想起される人格は単独性である。だが、それだけなのではない。そこで顕現した単独性は、未来の同名者へと係留される。つまり単独性と特殊性はつねに連関している。墓やSNSといった近代以降に導入された「想起のメディア」は単独性だけでなく、特殊性をも再生産している。
こうした事例を踏まえ、ヴァヌアツ・アネイチュム島の経験した特異な歴史を考慮して、人格は「単独性か特殊性か」と二者択一なのではなく、両者が共在したものなのだと結論づけた。
これまでの人類学的な人格論は、M.ストラザーンの「dividual/individual」という対比軸から論じられることが多かったが、本研究はそれとはまったく違う新機軸を打ち出した。その最も大きな成果として、3月に単著『共在する人格:歴史と現在を生きるメラネシア社会』(春風社)を出版した。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023

すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (3件)

  • [学会発表] 他者への「配慮」と分断しない社会:ヴァヌアツの観光をめぐって2023

    • 著者名/発表者名
      福井 栄二郎
    • 学会等名
      日本文化人類学会第57回研究大会
  • [学会発表] 楽園とダークネス2023

    • 著者名/発表者名
      福井 栄二郎
    • 学会等名
      日本文化人類学会東北地区懇談会
    • 招待講演
  • [図書] 共在する人格:歴史と現在を生きるメラネシア社会2024

    • 著者名/発表者名
      福井 栄二郎
    • 総ページ数
      374
    • 出版者
      春風社
    • ISBN
      978-4861109089
  • [図書] 世界ぐるぐる怪異紀行:どうして「わからないもの」はこわいの?2024

    • 著者名/発表者名
      福井 栄二郎 ほか
    • 総ページ数
      192
    • 出版者
      河出書房新社
    • ISBN
      978-4309617626
  • [図書] 世界のクリスマス百科事典2023

    • 著者名/発表者名
      福井 栄二郎 ほか
    • 総ページ数
      390
    • 出版者
      丸善出版
    • ISBN
      978-4621308479

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公開日: 2024-12-25  

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