研究課題/領域番号 |
21K01064
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
鈴木 裕之 国士舘大学, 法学部, 教授 (20276447)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アフリカ / マンデ / グリオ / 音楽 / SNS / モバイル / 口頭伝承 |
研究実績の概要 |
2022年2月15日から3月16日までの旅程で、コートジボワール共和国アビジャンに滞在し、参与観察、インタビュー、資料収集を中心とするフィールドワークを行った。 このフィールドワークにおいて、まずはコートジボワールの最近の音楽事情を理解するために音楽業界関係者やテレビ、ラジオ、雑誌などで活動するジャーナリストに会ってインタビューを行った。 また、調査対象のグリオ(語り部)の調査を行うために、何人かの知り合いのグリオに声をかけ、近く行われる祭礼を聞き出し、その中で調査可能なものをピックアップした。最終的には2件の伝統的な結婚式について参与観察・インタビューを行い、行事のプロセスと、その過程においていかにグリオが音楽活動を行っているかを調査し、ビデオ撮影を行った。とくに、従来はジェンベと呼ばれる太鼓の合奏団が伴奏を務めるのが一般的であったが、現在ではあらかじめコンピューターでプログラミングされたリズムをスマートフォンからアンプにつなげ、グリオの歌の伴奏をするパターンが生まれたのが、新しい現象として目を引いた。 さらに本研究の中心テーマであるグリオとSNSとの関係を理解するために、調査の過程でグリオがSNSやデジタル機材をいかに使用しているかに着目するとともに、後日グリオ本人にインタビューを行い、直接本人に質問した。この点については、調査のサンプル数を増やして、さまざまに異なる事例を収集する必要があるため、次回のフィールドワークにおいて継続調査を行う予定である。 以上、参与観察とインタビューを中心とした調査により、本研究で必要とされる一次資料を入手すると共に、グリオの活動状況をビデオ撮影して記録することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍における海外旅行手続きの複雑化から、アフリカに渡航できなくなる可能性も多々あったが、何とか無事に1か月のフィールドワークを実施することができ、3年にわたる研究計画の第1段階はクリアできたと考えている。 まずグリオの活動状況については、フィールドであるコートジボワール共和国アビジャンにおける2件の結婚式への参与観察を通して、グリオの音楽活動の現状を具体的に把握することができた。とくに、パソコンやスマホを使用したプログラミングの導入など、一般の祭礼においてデジタル技術が関わっている度合いが観察できたことの意味は大きい。一方で、アコースティックな太鼓による従来通りの伴奏も健在であり、今後、デジタルとアコースティックのバランスがどう変化していくのか、という研究テーマが明確化されたといえる。 グリオとSNSとの関係については、数人のグリオに対して、FacebookやYoutubeの活用状況についてのインタビューを行い、グリオがSNSを活用する度合いが高まっていることを確認した。デジタル技術の普及により、低予算でサウンドやビデオを作成することが可能となったため、多くのグリオがパソコンを使用して楽曲を録音し、プロモーションビデオを作成し、それらをYoutubeにアップし、またスマートフォンとFacebookの普及により、結婚式などの祭礼やコンサートの模様をFacebook上に投稿し、世界中のマンデ系住民がそれらYoutubeやFacebookにリアルタイムでアクセスするという状況が生まれている。その手法は各グリオによって異なっているため、サンプル数を増やして様々なバリエーションを収集する必要があるが、少なくともグリオによるSNSの活用が活発化しているという現状を把握することができた。 以上、3年計画の1年目が終了した現時点において、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、フィールドワークによる一次資料の収集を中心に、その他文献資料などの収集も進め、さらにグリオによるインターネット上での活動(Facebook、Youtube、Instagramなど)を継続的にフォローしながら、グリオによるSNS活用の実態を探ってゆく。 まず、2022年度もフィールドワークを行うが、今回はコートジボワール共和国アビジャンを中心としながら、隣国ギニア共和国の首都コナクリにも滞在し、比較対象の資料を収集する。ギニアも北部を中心にマンデ系住民が多数おり、音楽産業の中心でもある首都コナクリには多くのグリオが居住し、伝統的祭礼のみならず、ポップスの分野でも歌手として活躍している。そこで、彼らの音楽活動の実態、SNS活用の状況を調査し、アビジャンのケースと比較しながら、より広い視野に立ってグリオとSNSとの関係について考察する。 さらに2023年度にはアビジャンに加えてフランスのパリにおいてもフィールドワークを行い、移民として暮らすグリオの音楽活動状況、SNS活用状況について調査する。パリには数多くのマンデ系移民がおり、移民コミュニティにおける祭礼・儀礼でグリオが活動している。またパリは世界的な音楽産業の中心地でもあり、ワールドミュージックの分野で活躍するグリオも多い。テクノロジーの発達したパリにおいて、アフリカとは違った形で音楽活動が展開し、SNSの活用が進んでいるのか、といったテーマについて調査する必要がある。 また、多くのグリオはアフリカ本国とパリを往復しながら音楽活動を展開しているが、このパリ=アフリカ・コネクションが音楽活動、SNS活用にどのような影響を与えているのかについても調査してみたい。 以上、残り2回のフィールドワークを通してグリオの調査を進めながら、SNSがアフリカの口頭伝承に与えるインパクトについて、具体的に検証してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
フィールドワークのためのアフリカへの渡航期間が2022年2月20日から3月20日であったが、その間に出費した交通費、宿泊費、文献購入費、渡航のためのPCR検査費用などの清算が事務手続き上、2021年度末では間に合わなかっため、清算処理が次年度に繰り越された。
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