研究課題/領域番号 |
21K01066
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
牧野 冬生 東洋大学, 国際学部, 教授 (50434387)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 墨米移民 / 可視的空間 / 経済・娯楽的紐帯 / 共創的社会景観 / メキシカン・コミュニティ |
研究実績の概要 |
本研究の3年目にあたる2023年度における研究実績は、以下の通りである。研究の3年目である2023年度は、これまでコロナウイルスの影響で実施出来ていなかった墨米移民(経済・娯楽的紐帯)に関わるフィールドワークを米国・カリフォルニアで実施した。また、関連文献の精査、理論体系の整理、メキシコの研究機関における研究協力者とZOOMによる打ち合わせを実施した。各課題に関する具体的な研究実績は、以下の通りである。 1)「宗教行事を軸にした社会空間のシンボル性の脆弱化と経済・娯楽的紐帯の台頭のプロセス」においては、教会と敷地周辺部の経済・娯楽的紐帯を中心にしながら、カリフォルニアにおける伝統的カトリック教会と現代的な大規模教会における踏査調査、実際の社会空間の形成に関わるフィールド調査、インタビュー調査を実施した。 2)「再解釈されたメキシコ観の「可視的空間への表出・あふれだし」の混在性と実態」においては、カリフォルニアにおける多文化主義的状況の中で、主に商業空間におけるメキシカンまたはカリフォルニア・メキシカンの混在状況について調査した。 3)「若年墨米移民が故郷と共同で構築する「経済・娯楽型社会空間」の理論的枠組みの提示」については、上記のフィールド調査から理論化に向けて一次資料を蓄積することができた。 本研究の目的は、現在的な側面を踏まえつつ長期の社会空間・生活空間の変容を捉え、若年墨米移民が故郷と共同で構築する「経済・娯楽型社会空間」の理論的な枠組みを提示することにある。調査結果を精査しながら、最終年度に向けて十分な資料形成につなげることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の各課題における進捗状況は以下の通りである。 1)「宗教行事を軸にした社会空間のシンボル性の脆弱化と経済・娯楽的紐帯の台頭のプロセス」においては、2021-2022年度はフィールドワークが実施できなかったために一部遠隔によるインタビューが可能であったが、文献調査に偏りがちであった。本年度は複数の教会(ロサンゼルスの伝統的カトリック教会、現代建築の教会、郊外の教会)でフィールドワークを実施し、比較分析に結びつけることが出来た。それによって、宗教行事を軸にした社会空間のシンボル性の脆弱化だけでなく、墨米移民間で継続する具体的な宗教的表象についても確認することができた。 2)「再解釈されたメキシコ観の「可視的空間への表出・あふれだし」の混在性と実態」においては、商業空間での調査だけでなく、墨米移民が多く居住するアナハイム郊外の住宅デザインについてもその溢れ出しの実態を看取できた。 3)「若年墨米移民が故郷と共同で構築する「経済・娯楽型社会空間」の理論的枠組みの提示」については、本年度の調査を踏まえて(①歴史観光地区:エル・プエブロ、②都市部:ロサンゼルス・ダウンタウン、③郊外:オレンジ郡アナハイム)のそれぞれにおいて(1)持続的景観、(2)定期的景観、(3)一時的景観、(4)動的景観、という4つの景観性の特質についても考察し議論を深めることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
研究の3年目にあたる2023年度は、本来は本研究の最終年度であり研究総括にあたる年であった。2020-2021年度はコロナウイルスの影響でフィールドワーク調査が実施できなかったため、補助事業の目的の達成とその精緻化を目指して補助事業の延長を申請した。2024年度の研究推進概要は以下の通りである。研究期間の4年目にあたる2024年度に向けては、2023年度のフィールドワークの調査結果、文献調査、関係者に対するZoomによるインタビュー等を精査した上で、研究成果をとりまとめて報告書の執筆作業を行う。また必要に応じて、追加インタビューや米国・メキシコにおいてフィールドワークを再度実施する。また、研究成果の海外論文誌への投稿も予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) コロナウイルスの影響で2021-2022年度において予定していたフィールド調査が実施できなかったため、基盤Cの延長を行い追加フィールドワークを実施する。 (使用計画) 2024年度の使用計画については、米国での追加フィールドワーク(外国旅費)を予定しているのに加えて、必要に応じてメキシコでのフィールド調査、文献購入、論文投稿のための校閲費等の使用を予定している。
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