研究課題/領域番号 |
21K01072
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研究機関 | 京都外国語短期大学 |
研究代表者 |
志村 真幸 京都外国語短期大学, キャリア英語科, 非常勤講師 (00625204)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 専門分化 / 査読制度 / 南方熊楠 / ネイチャー誌 |
研究実績の概要 |
本研究では、博物学者・民俗学者として、文理にまたがった活躍をした南方熊楠によるイギリスの科学誌『ネイチャー』および『ノーツ・アンド・クエリーズ』への投稿の分析を通して、20世紀前半に自然科学と人文科学が分離・対立していく過程を明らかにすることを目指している。具体的には、熊楠の投稿の年代的な変化と、リジェクトされた論文に注目し、論文の変化/掲載される学術誌の変化/学問分野の細分化を分析しようとしている。 イギリスでの調査を予定していたが、まったく実施することができなかったため、在英協力機関と連絡をとりつつ、2022年度以降の渡英の準備を進めた。国内では、南方熊楠顕彰館にて草稿資料の翻刻を行なった。 研究成果としては、「英文論考の草稿の研究-『N&Q』掲載版との比較から」『熊楠研究』16号(2022年3月)にて、熊楠の執筆/リライトの過程を分析した。『絶滅したオオカミの物語-イギリス・アイルランド・日本』(志村・渡辺洋子、三弥井書店、2022年3月)では、民俗学、動物学、生態学、文学、民話学などの交わるテーマとしてオオカミの絶滅を取り上げた。19世紀以前の総合的なオオカミへの関心は、次第に専門分化し、とくに生態学と民俗学では大きな乖離をみせるようになる。そして20世紀末からアメリカを中心に進んだ、絶滅した地域へのオオカミの再導入をめぐっては、衝突さえ起こす事態を招いたことを、歴史的な側面から解明した。 松居竜五・志村真幸・プラダン ゴウランガ チャラン「大英博物館理事会への「陳情書」および関連書簡」および、松居竜五・志村真幸・プラダン ゴウランガ チャラン「アメリカ時代の「文明進化論」」(いずれも『熊楠研究』16号、2022年3月)では、英文資料の翻刻と翻訳、さらに解題を行なうことで、熊楠がアメリカ、イギリス時代におかれていた学問状況を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まったく渡英できなかったことにより、現地に残る資料(投稿したもののリジェクトされ、投稿者の手元にも返却されなかった原稿)の調査がまったく進んでいない。イギリスでは厳戒態勢が緩みつつあるため、2022年度には渡英できるかと期待されるが、いまのところ不明である。 また、南方熊楠顕彰館も外部からの訪問を完全に遮断していた時期があり、こちらでも調査が遅れている。 状況によっては研究期間の延長を検討すべきかも知れない。
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今後の研究の推進方策 |
渡英ができるようになるのを待つだけではなく、別のアプローチができないか、考慮していくこととする。具体的には、扱う雑誌を『ネイチャー』と『N&Q』のみに限らず、広げていくことが考えられる。オランダの『フラヘン・エン・メデデーリンゲン』、アメリカの『ポピュラー・サイエンス・マンスリー』などが候補となり、日本国内で発行された雑誌についても視野に入れていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
いっさいの出張ができなかったため、大幅に生じることとなった。2022年度の海外調査の期間を長くすることで、2021年度分の調査を補いたい。
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