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2021 年度 実施状況報告書

原子力開発のグローバルなネットワークの周縁における生活世界の変容の人類学

研究課題

研究課題/領域番号 21K01076
研究機関東京外国語大学

研究代表者

内山田 康  東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (50344841)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード原子力マシーン / 核実験 / 被曝 / 生活世界
研究実績の概要

原子力発電および核兵器に関わる原子力開発は、私が「原子力マシーン」と呼ぶ巨大なネットワークの中で、メトロポリスの政治および経済活動の中心地では、原子力政策の決定が行われ、電力等の成果や核兵器を保持する軍事およびそれに関連する技術および産業が発展し、その成果が享受されている。他方、原子力施設が立地する周縁の地域、放射性廃棄物の貯蔵施設やそれが廃棄される場所、ウラン鉱山のある/あった地域、核実験が行われた地域の周囲の生活世界では、どのような社会変容、環境の変化、被曝、放射能の知の獲得が起きたのか。また、現在これに関連するどのような過程が進行しているのかについて、文献調査を行った後、フランス領ポリネシアにおいて1月11日から3月26日までフィールドワークを行った。その期間中、核実験場に近いガンビエ諸島に1月25日から3月15日までの7週間滞在し、その内の6週間は、マンガレヴァ島において夫/父が核実験場で働き、大気圏中核実験の放射性降下物による環境汚染の影響を経験し、自らも被曝した人々が住む家の小屋に住みながら、核実験の経験のコンテクストとなる社会変容についての民族誌的調査を行った。さらに、核実験に関連した施設と瓦礫のマッピングを行い、核実験の直接の経験に関する聞き取りを行った。
ガンビエに赴く前は、コンタクトもなく、住む場所も決まっていなかったため、今回の調査ではインフォーマントを探し、住める場所を探し、人々と良い関係を築くことを目的としていたが、滞在1週間後にはインフォーマントと住む場所が決まり、その後は親族のネットワークや核実験の被害に関心を持つマンガレヴァの人々に助けられて、被曝を経験した多くのインフォーマントたちと知り合うことができた上、彼/女たちから質の高い情報を得ることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

フランス領ポリネシアにおいて1966年から1996まで193回行われた核実験が、核実験場に近い島嶼の生活世界にどのような影響を与えたのについて調査するにあたり、調査地をガンビエ諸島に絞り、マンガレヴァ島に7週間滞在し、その内の6週間は核実験の放射性降下物を浴びただけでなく、核実験場で働いた夫/父が、島の水準では高収入を得るようになり、酒浸りになり、家族を捨てたために、貧困を経験した家庭に住み込んで調査を行った。滞在した家族の親族のネットワークを伝いインフォーマントを増やすことができた。また、核実験の経験について話を聞いて欲しい人々が数多くいて、そのような人たちから質の高い情報を得ることができた。私は毎日夕方になると、島の道を島の水準ではかなり長い距離を走っていたので、多くの人々に見られて関心を持たれ、インフォーマントを予想以上に増やすことができた。また、核実験によってさまざまな被害を受けた人たちが、話を聞いて欲しいと思ったいたこともプラスに作用したと考えられる。

今後の研究の推進方策

マンガレヴァには2022年の10月と11月に戻る予定だったが、インフォーマントたちに強く勧められて9月と10月に戻り、7週間滞在することになった。というのは9月上旬にマンガレヴァでトレイルのレースがあり、それに参加することを求められたためである。自分の年齢(66歳)と膝の故障が気にかかって躊躇したが、インフォーマントを増やす良い機会であると捉えて、レースに出場することにした。このトレイルのレースは島の端から端まで走るので、多くの人たちに見られて顔を覚えられ、調査のために訪れた時に、よりスムーズに会話をすることができると考えている。
核実験が始まった当初、マンガレヴァ島の人々は放射能の危険について、フランス軍から情報を得ていなかった。何時、どのような出来事を契機に、何を知るようになったのかについて、できるだけ多くのインフォーマントから聞き取りを行うつもりである。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (14件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 戸惑いと嘘76神の死と主権の秘密②だからポリネシアで核実験が続いた2022

    • 著者名/発表者名
      内山田康
    • 雑誌名

      日々の新聞

      巻: 452 ページ: 2-3

  • [雑誌論文] 戸惑いと嘘63太平洋①再び時間を与えられて長いものを読む2021

    • 著者名/発表者名
      内山田康
    • 雑誌名

      日々の新聞

      巻: 439 ページ: 2-3

  • [雑誌論文] 戸惑いと嘘64太平洋②ポリネシアにどう向かうのか思案していた2021

    • 著者名/発表者名
      内山田康
    • 雑誌名

      日々の新聞

      巻: 440 ページ: 2-3

  • [雑誌論文] 戸惑いと嘘65太平洋③過去はどう想起され何処へ向かうのか2021

    • 著者名/発表者名
      内山田康
    • 雑誌名

      日々の新聞

      巻: 441 ページ: 2-3

  • [雑誌論文] 戸惑いと嘘66太平洋④まずいヤキソバに七十銭もとる2021

    • 著者名/発表者名
      内山田康
    • 雑誌名

      日々の新聞

      巻: 442 ページ: 2-3

  • [雑誌論文] 戸惑いと嘘67太平洋⑤戦略なき戦いの末路と戦略の闇2021

    • 著者名/発表者名
      内山田康
    • 雑誌名

      日々の新聞

      巻: 443 ページ: 2-3

  • [雑誌論文] 戸惑いと嘘68太平洋⑥怒りつけても権力は権威にならない2021

    • 著者名/発表者名
      内山田康
    • 雑誌名

      日々の新聞

      巻: 444 ページ: 10-11

  • [雑誌論文] 戸惑いと嘘69幾度も超えられた無数の浜辺①ポリネシアの核実験に至る導きの糸2021

    • 著者名/発表者名
      内山田康
    • 雑誌名

      日々の新聞

      巻: 445 ページ: 2-3

  • [雑誌論文] 戸惑いと嘘70幾度も超えられた無数の浜辺②愛は下部構造、星は下部構造2021

    • 著者名/発表者名
      内山田康
    • 雑誌名

      日々の新聞

      巻: 446 ページ: 2-3

  • [雑誌論文] 戸惑いと嘘71幾度も超えられた無数の浜辺③主権の初めに暴力があった2021

    • 著者名/発表者名
      内山田康
    • 雑誌名

      日々の新聞

      巻: 447 ページ: 2-3

  • [雑誌論文] 戸惑いと嘘72幾度も超えられた無数の浜辺④銃を向けると彼らは笑った2021

    • 著者名/発表者名
      内山田康
    • 雑誌名

      日々の新聞

      巻: 448 ページ: 2-3

  • [雑誌論文] 戸惑いと嘘73幾度も超えられた無数の浜辺⑤神の力を媒介する赤と黄の羽2021

    • 著者名/発表者名
      内山田康
    • 雑誌名

      日々の新聞

      巻: 449 ページ: 2-3

  • [雑誌論文] 戸惑いと嘘74幾度も超えられた無数の浜辺⑥至高性の源泉だったオロ神が死んだ2021

    • 著者名/発表者名
      内山田康
    • 雑誌名

      日々の新聞

      巻: 450 ページ: 2-3

  • [雑誌論文] 戸惑いと嘘75神の死と主権の秘密①生者を消して潜勢力を産む暴力2021

    • 著者名/発表者名
      内山田康
    • 雑誌名

      日々の新聞

      巻: 451 ページ: 2-3

  • [学会発表] 原子力マシーンの人類学2021

    • 著者名/発表者名
      内山田康
    • 学会等名
      第54回中国四国人類学懇話会
    • 招待講演
  • [図書] 「原子力マシーン」『わざの人類学』2021

    • 著者名/発表者名
      内山田康
    • 総ページ数
      43
    • 出版者
      京都大学学術出版会
    • ISBN
      978-4814003754

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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