研究課題/領域番号 |
21K01077
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
古家 信平 筑波大学, 人文社会系(名誉教授), 名誉教授 (40173520)
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研究分担者 |
松本 浩一 筑波大学, 図書館情報メディア系(名誉教授), 名誉教授 (00165888)
武井 基晃 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (00566359)
森田 真也 筑紫女学園大学, 文学部, 教授 (10412686)
神谷 智昭 琉球大学, 国際地域創造学部, 准教授 (90530220)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 琉球国由来記 / 女性神役 / 御嶽 |
研究実績の概要 |
今年度はコロナ感染状況が落ち着きを見せたことから、昨年度全く実施できなかった沖縄本島の現地調査を研究者それぞれの課題に従って行うことができた。出張期間は以下のとおりである。古家(2022.5.17~5.22 6.14~6.19 9.7~9.14 2023.2.11~17)松本(2022.9.7~9.14 2023.2.11~17)神谷(2022.5.18~5.21 6.15~6.16 9.7~9.14 2023.2.13~2.15)武井(2022.6.16~6.19 11.4~11.9)。現地で年中祭祀が徐々に復活していることに合わせてその現状を調査できた。また、研究代表者と分担者が現地で情報交換できるように数名が重複して出張期間を設けた。 研究課題の一つとしている沖縄南部と北部の聖地の差異については、今年度はもっぱら南部の東風平 糸満に集中して現地調査を行い、聖地の配置、名称、形態、集落全体との関連、旧家や女性神役について調査した。御嶽という用語は琉球国による命名であるが、その内実は多様で、北部では祭りの時行事に使われる場に当たるアサギが南部では香炉をまつる祭祀対象となる場合があり、北部には見られない殿は何に比定されるのか、といった従来は南部と北部でそれぞれに示されていた事項を統合して考察する必要性が感じられた。『琉球国由来記』記載の事項の解釈についても、現状を十分に吟味する必要が感じられた。 研究の公開については、お茶の水女子大学国際日本学シンポジウム(2022.9.17)で古家と武井が研究発表し、各自数点の論文報告があるほか、森田は共著で『踊る「ハワイ」・踊る「沖縄」-フラとエイサーにみる隔たりと繋がり―』(明石書店)を刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は現地調査ができ、糸満市名城で女性たちによるウシデーク、山城で綱引きの行事を調べ、聖地の配置を把握できた。そのほか戦前と戦後の地図資料の準備できた南部の数集落で旧家、聖地の配置を実地に確認した。これは次に実際の行事において女性神役の行動を合わせて考える前提となる。 『琉球国由来記』巻12~15の沖縄本島各間切における御嶽と拝所、祭祀に関するデータは入力が完了した。この後データベースソフトに格納し、さらに検索プログラムを組むことになっている。今年度に実地に御嶽等を見て回ることができ、由来記の記載の解釈にそれを活用できるようになり、これまで詳しい分析がなされていない巻1の王城の年中行事と巻5の王城、首里の御嶽と年中行事の記述との関係についても、ある程度見通しができてきた。 昨年度、コロナ感染拡大のために実地調査ができなかったことから、新聞資料の収集を行った中に首里城火災に対する人々の見解を知ることができた。本年度は県立図書館でさらにデータを追加して、北部の人々の首里に対する地理的距離に加えて「心の距離」というべきものを摘出できた。本研究課題の南北格差を穏やかな形で伝えるものであり、現代民俗論の観点から一層分析を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでの文献による調査を踏まえて、当初の計画にあるように現地調査を行って一次資料を整備することとしたい。具体的には聖地・拝所についての配置等を調査済みの南部の集落で、実際に女性神役が実修する儀礼を調査し、併せて『琉球国由来記』の記述と対比する。由来記には各地の供物の分布の特徴、百姓・地頭・宗教者の分担が書かれており、どのような地域差が存在するのか、その分析手法は明確にできないが、とりあえず簡単な統計的方法で把握することから始めたい。 新聞資料はこれまで完了している『琉球新報』に『沖縄タイムス』を追加して量的に完備し、これまでにつけた見当が当たっているかどうか判断したい。 現地調査では日常会話の中から本研究課題である南北格差をうかがえるものであり、それをあらかじめ予期することはできない。そのあたりが調査の難しい処でもあり、醍醐味であるともいえる。研究グループは沖縄研究に長く携わっており、その経験を踏まえて困難を乗り切るものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画ではフィールドワークに多くの時間を割くことになっている。コロナ感染状況が改善されたとはいえ、まだ現地の受け入れ態勢が十分に出来ていないことなどから、現地調査が実施できなかったため、旅費に計上した部分の使用ができなかった。
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