研究課題/領域番号 |
21K01078
|
研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
吉野 晃 東京学芸大学, 教育学部, 名誉教授 (60230786)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | ミエン / 歌 / 定詞歌 / 即興歌 / 漢語 / ミエン口語 / ミエン歌謡語 / テクスト化 |
研究実績の概要 |
2021年度においては、過去に収集した歌の歌詞の分析を主に行った。ミエンの儀礼文書や歌詞は漢字で書かれる。儀礼に用いる経典などは漢語で書かれ、漢文として読めるが、歌の歌詞は漢字で書かれていても次のように表記に多様性がある。1.ミエン口語語彙・歌謡語語彙に音の通じる漢字を宛てたもの(漢語としては意味は通じない)、2.漢語由来の語彙であるが現代漢語とは意味が異なる語彙、3.漢語と同じ意味で使われる字・語彙、4.発音はミエン語であるが,文字は意味の通じる字を宛てている語彙(漢語として意味は通じるが、音はミエン語)の4種である。1や2の語彙が多くなると、漢文としては意味が通じなくなり、3,4の語彙が増えると漢文として意味が通る歌詞となる。 ミエンの歌の歌詞の種類は十数種ある。そのうち、定詞歌、歴史故事歌、物語故事歌、悲嘆歌、恋愛歌、即興の遊び歌について語彙成分の分析を行った。定詞歌は歌詞が固定化された歌を指す。この対極にあるのが即興歌である。定詞歌←→即興歌(恋愛歌・遊び歌)の対立には、①漢語語彙←→ミエン語語彙、②テクスト化←→非テクスト化、③流布←→一回限り、④不特定聴衆対象←→特定個人対象、⑤抽象的・一般的叙述←→私事・個人的叙述といった特徴の対立が重なる。この定詞歌←→即興歌の両極の間にそれぞれの種類の歌が位置する。歴史故事歌と物語故事歌は、テクスト化、流布、不特定聴衆対象という点で、定詞歌寄りに位置し、悲嘆歌は一回限り、私事・個人的叙述という点で、即興歌寄りに位置する。使用言語については、定詞歌は漢語語彙の比率が多く、遊び歌と恋愛歌はミエン口語・ミエン歌謡語語彙の比率が多い傾向にあった。 この他、「飄遙過海」(渡海)神話が多様なメディアで伝承されており、歌もこの神話を伝承する有力なメディアであることを明らかにした。また、収集した歌詞から新たな歌謡語語彙を抽出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの蔓延のため、海外における現地調査ができなかった。それ故に歌謡の資料収集ができず、当初予定した計画を果たせなかった。過去に収集したデータも、疑問点を解消するために現地調査で確認が必要であるが、それも果たせなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度はタイに渡航できる見通しとなったため、現地調査を行う予定である。併せて過去に収集したデータの分析も行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス蔓延のため、タイにおける現地調査を執行できなかった。そのため、旅費を支出する事ができず、次年度使用額が生じてしまった。 2022年度においては、タイ渡航も可能となる見込みであり、現地調査を行い旅費を支出する予定である。
|