研究課題/領域番号 |
21K01081
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
井上 さゆり 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 教授 (40447503)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ビルマ / ミャンマー / 古典歌謡 / 竪琴 / 楽譜 / 口頭伝承 / 口唱歌 / 記譜 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ビルマ古典歌謡の伝承手段である口唱歌と口唱歌が伝える音楽構造を記述・分析し、口頭伝承の構造を明らかにすることである。口唱歌とは楽器音を言葉で伝えるもので、世界各地の音楽伝承で見られる伝承手段である。 2022年度は前年度に引き続き口唱歌とそれに対応した音楽の最小単位である「アクウェッ」との関係に焦点を絞ってその記述と分析を進めた。コロナ禍とミャンマーの政変により昨年度まで実施できなかったミャンマーでのフィールド調査を8-9月に4週間実施することができた。古典歌謡の四大難曲の一つである作品をマンダレー在住のドー・キンメイ氏より口頭伝承で学んで習得するとともに、同作品のアクウェッと口唱歌の記述を行った。 また、平成22-25年度科研費により撮影を行った竪琴奏者ウー・ミィンマウンの手書き楽譜約3000枚、770曲分に基づき頻出するアクウェッの抽出作業を進めた。さらに科研課題番号118K01191で行った同一曲の異なる楽譜の整理に基づき、同一旋律(アライッ)に対する楽器演奏のバリエーションを抽出する作業を行った。 以上の研究成果に基づき、46th ICTM (International Council for Traditional Music) World Conference(Lisbon, Portugal 2022年7月21-27日)にて、"Producing Variation in the Performance of Myanmar Classical Songs: Focusing on the Transmission and Memorization System"のタイトルで口頭発表を行った。さらに、2023年度開催予定の47th International Council for Traditional Music(13-19, July 2023, Legon, Ghana)に口頭発表を申し込みアクセプトされ、その論文執筆を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文執筆はやや遅れ気味であるが、3年ぶりにフィールド調査を実施することができ、新規のデータを収集することができた。特に口唱歌の記述を進めることができた。また昨年度よりほぼ毎日オンラインでもドー・キンメイ氏より竪琴演奏の指導を受けることができるようになり、当初の予定より大幅に口頭伝承の実践を積むことができ口唱歌の調査が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在行っている口唱歌の分析(ウー・ミィンマウンの手書き楽譜に基づいて、口唱歌を記述し体系化する)を進める。口唱歌による伝承とアクウェッの構造から演奏のバリエーションが何によって規定されるのかを分析し、その研究成果を2023年度開催予定の47th International Council for Traditional Music(13-19, July 2023, Legon, Ghana)にて"What are the Norms? The Range of Variations in the Performance of Myanmar Classical Songs"のタイトルで口頭発表を予定している。最終的に、口唱歌と口唱歌が伝える音楽構造を記述・分析し、バリエーションの仕組みについても分析した上で口頭伝承の仕組みを明らかにし成果をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
前倒し支払い請求を行ったうち、端数が出たため次年度使用が生じたが、次年度はガーナ及びミャンマー出張を予定しており、これに充当する計画である。
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