研究課題
初年度にあたる2021年度はコロナ禍のため海外渡航を実現することができなかったため、日本国内において中国国内のハラール産業に関する基本文献(主に日本語、中国語)を収集・整理し、また、SNSを活用して中国在住の情報提供者に対して聞き取り調査を実施し、中華人民共和国成立後の社会主義建設と回族のハラール産業との関わりを主に屠畜業に焦点をあわせて分析した。詳細については拙稿[澤井 2022]で論じたように、中国共産党が1950年代以降に社会主義改造、宗教制度民主改革、文化大革命を強行した結果、私営の屠畜業者が廃業させられ、屠畜を担う専門家(屠師)が清真寺から追放され、屠畜業が国営企業として集団化されたことの意味を文献資料および口述資料にもとづいて記述・分析した。このようなハラール産業の変遷を現代中国の政治社会変動と関連づけながら考察した研究には以下のような意義および重要性がある。すなわち、中国共産党が1949年に政権を樹立した後、少数民族の伝統的な生業がどのような荒波に巻き込まれ、ハラール産業従事者が翻弄されることになったのかという基本的な問題を個別具体的に検証することができる。また、ハラール産業のなかの屠畜業という特定の業種に焦点をあわせ、屠師が歩んだ歴史(軌跡)に注目することによって、現代中国に暮らす少数民族が経験した社会主義建設(特に社会主義改造にともなう公私合営化、国営化)の実態をミクロな次元から深く知ることができる。このような特定の業種(屠畜業)に関する社会史的研究によって現代中国の少数民族社会において民俗知の継承が一時的に途絶えたということを解明することができた。
2: おおむね順調に進展している
2021年度はコロナ禍のため海外渡航を実現することができなかったが、そのかわり、文献調査および文献研究、SNSを活用した情報提供者への聞き取り調査を実施したため、本研究課題は比較的順調に進められている。
2022年度もコロナ禍のため海外渡航が困難となる可能性が予想されるが、2021年度と同様、文献研究およびSNSを活用した情報提供者への聞き取り調査を継続し、本研究課題をできるかぎり予定通り推進するつもりである。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
人文学報
巻: 518-2 ページ: 123-144
ProcMuslims in China and their Multicultural Spheres: Coexistence through Migratory, Cultural, and Economic Practices
巻: 0 ページ: 21-38