研究課題/領域番号 |
21K01089
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
孫 潔 佛教大学, 文学部, 講師 (10547326)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 辺境 / 移民 / 言語 / アイデンティティー |
研究実績の概要 |
2年目である2022年度は、以下の項目について、調査・研究を行うことに努めた。 1.2022年では、コロナ禍のせいで、海外でのフィールドワークができなかったが、8月北海道へ赴きフィールドワークを実施した。北海道開拓の村、北海道博物館、北海道大学などを見学、関連する資料の収集を通して、明治時代から行われた北海道開拓の歴史、経緯、関連する主体を初歩的に把握できるようになった。また、政策移民ではなく、自己意思で中国から日本に移住した在日中国人がいかに母国からの親友を歓待するのかを考察した。以上の研究調査を踏まえ、中国国内で移住する政策移民と中国から海外への移民及び北海道開拓移民との比較研究を行った。 2.2023年2月~3月、中国雲南省と四川省へ赴きフィールドワークを行った。主に雲南省図書館、雲南省档案館、中国三線建設博物館で政策移民の関連資料を中心に収集した。また雲南省昆明鋼鉄会社、雲南汽車製造工場、タイヤ工場、ガラス工場など、1950、60年代に政策移民を受け入れ建設した工場をいくつか見学し、関係者へ聞き取り調査を行った。工場建設の当初から1980年代にかけて、政策移民が閉鎖的な環境で暮らしていたため、工場への依存意識が高く、辺境移民のアイデンティティーが形成されてきた。そのアイデンティティ形成にいたった歴史的経緯を考察した。 3.政策移民及びその子どもの使用する言語に焦点をあて、政策移民の言語維持、仕事場と生活場の異なる場所における言語の使い分け、また彼らの子どもの言語継承や言語学習を考察し、言語とアイデンティティー形成の相互作用を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年2月~3月、海外での調査はようやく実施できた。それにも関わらず、調査実施できた時期は年度末となったので、収集した資料の整理が年度内に完成できず、計画書通りの学会発表及び論文執筆もやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
3年目にあたる2023年度は、引き続き国内外の研究動向を把握しながら、現地調査の実施、研究会での発表、及び論文執筆を予定している。 現地調査では、1)上海档案館(公文書館)、知青博物館、貴州省都匀三線建設博物館、重慶汽車三線建設博物館などを訪問し、現地でしか手に入らない資料を集めに行くつもりである。2)雲南省と上海市における帰郷した移民及び彼らの家族を対象に、個別に家庭を訪問し聞き取り調査を実施する予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
アフターコロナ時代になっても、海外調査を行う際に、日本から中国までの航空券が依然として高騰している。また中国国内での調査にともない、物価高で想定外の費用が生じてくると推測できる。次年度のフィールドワークのために、少し多めな旅費を用意して使用する計画である。 また、論文執筆にあたっては、論文の校正、翻訳の費用を用意する必要がある。
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