本研究は、人々の刑罰意識を多角的に測定し、そのような刑罰意識を刑事政策上の議論においてどのように位置づけるべきかについて検討を進めることを目的として行われた。そのような目的を達成するため、まず、刑罰意識に関する既存の実証研究を整理し、その研究動向や到達点について確認をするとともに、本研究で実施する調査においてどのような調査項目を設定すべきかについて検討を進めた。なお、現時点までの刑罰意識の動向に関する整理については、やや時期が遅れたものの、本科研の最終年度に刊行された書籍に収録された論文において、特に日本の研究動向に絞ったかたちで主要な結果を報告した。 このように既存の先行研究を整理しつつ、関連し得る社会心理学等の領域の研究も参照して、調査項目の調整作業を行った。この作業は、初年度にあたる2021年度と、2022年度の前半までに行った。あわせて、このように調査項目を選定する作業とあわせて、そこから得られた知見等を踏まえた考察を、既存の研究で得られたデータの分析結果を公表するにあたって反映させる作業も行った。 2022年度の後半には、これまでの検討を通して整理した調査項目をもとに、インターネット調査の実査を行った。実査自体は2022年12月中に完了し、その後、それにより得られたデータの分析作業を進めた。 最終年度である2023年度は、その前半に分析の整理を進め、後半は国内外の学会においてその成果を発表した。これらの学会では、国民の刑罰意識は厳罰的であるというよりも、犯罪の防止等のためには犯罪者の再社会化を図る政策についても賛成の程度が高いといったように、実用的(pragmatic)なものであると捉えるべきであるとの海外の研究における主張を足掛かりとし、2022年度に行ったインターネット調査の結果によれば,そのような世論の捉え方が日本においても妥当し得ることを中心に報告した。
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