研究課題/領域番号 |
21K01101
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
西 英昭 九州大学, 法学研究院, 教授 (50323621)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 法制史 / 東洋法制史 / 中国法 |
研究実績の概要 |
本年度は研究成果として「清末民初ドイツ語圏中国法学初考」(法政研究90巻3号・2023.12)を執筆・公開した。同論考は清朝末期から中華民国初期にかけて展開したドイツ人たちによる中国法学の様相を刑法典を繞る論争・青島特別高等専門学堂による研究及び教育、通訳及び外交官による研究の3方向から検討したものである。長年空白であった同テーマを扱う邦語論文として、学界の欠を補うことが出来たものと思料する。また『演習 中国近世の法と社会』(東洋文庫・2024.3)のうちの1章として「民国二年上字第六四号判例とその周辺」を執筆・公表した。同論考は近代中国において重要な役割を果たした「法律があれば法律に、法律がなければ習慣法に、習慣法がなければ条理によって裁判を行うべき」という原則がどこから来たものか、それらを端的に宣言した当時の判例を中心にその背景に遡って考察を試みたものである。日本さらには瑞西にも遡る法継受の一コマとして、またその原則が近代中国においてどのように拡散し影響を与えたかについて、中国近代法史の重要な欠を埋めることが出来たと思われる。 史料購入の面では、大変幸運なことに、当時主としてフランスで提出された中国人による博士論文モノグラフのコレクションをまとまった数購入することが出来た。旧来日本には所蔵のなかったものも含まれる。これらに加え、中国・台湾において発表された中国近代法史研究関連の書籍も充実させることが出来た。これらは申請者のみならず全国の研究者にとっての研究基盤充実に大きな役割を果たすことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近代における中国法学の展開について、ヨーロッパからの要素としてドイツの状況を公表し、中国本国からの要素として中華民国期の判例を扱った論考を公表し得た。日本における要素については現在資料収集を終えて原稿の執筆にとりかかっており、次年度には公表できる見通しである。研究全体から見て、おおむね順調に進展しているものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き近代中国法制史に関する一次資料・研究文献の収集に尽力し、研究基盤の整備に努めると共に、現在執筆中の近現代日本における状況を整理した論考を陸続発表する形で、研究成果の早期発信に努めることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度においてコロナ明けで本格的な出張活動が可能となったこと、また貴重な史料コレクションの出品があり早期に購入を行う必要があったことなどから300,000円の前倒し請求を行いこれに充てた。その余剰分として35,175円が生じたが、年度中に無理に消費すべきものではないため、次年度の史料購入乃至旅費に充てる予定である。
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