研究課題/領域番号 |
21K01103
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研究機関 | 白鴎大学 |
研究代表者 |
平山 真理 白鴎大学, 法学部, 教授 (20406234)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 裁判員制度 / 被告人 / 被害者 / 市民参加 / 法教育 |
研究実績の概要 |
2022年度は、被告人の権利の観点から裁判員制度をどう評価できるかについて、被告人の更生保護に携わる人々(保護観察官や更生保護施設の職員等)や、被害者参加弁護士として豊富な経験を有する弁護士に対し聴き取り調査を行った。 また、2022年度は研究成果の社会還元にも力を入れた。日本学術会議・法学委員会・「市民性」涵養のための法学教育システム構築分科会主催の公開シンポジウム「18歳と司法への市民参加」を企画し、本課題研究が共催というかたちで参加した。このシンポジウムでは、高校3年生の若者や高校教員をパネリストとして加え、18歳の若者が司法に参加するうえで持つ疑問や要望、また高校における法教育のあり方について議論を行い、裁判員制度の課題をひろく議論できたことには大きな意義があったと言える。 また、研究代表者が編者としても携わった『民主的司法の展望:四宮啓先生古稀記念論文集---統治主体としての国民への期待』(日本評論社 2022)の執筆者のうち、海外の研究者を中心としたパネリストによるセッション「Democracy in Justice, Respect for Individuals and Popular Sovereignty- Honoring Professor Satoru SHINOMIYA」(Global Meeting on Law and Society, 7月にリスボンで開催)を企画し、チェアを務めた。そこでは、日本、アメリカ、アルゼンチンにおける市民参加型刑事裁判について比較し、議論を行った。 本研究のこれまでの成果を「かくして裁判員制度は始まったーしかし、欠けていたのは何か?被告人の視点、被害者の視点、そしてジ ェンダーの視点」としてまとめ、須網隆夫編『平成司法改革の研究: 理論なき改革はいかに挫折したのか』(岩波書店 2022)の中の一章として刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、被告人の権利の観点から裁判員制度をどう評価できるかについて、裁判員裁判を担当した弁護人や、被告人の更生保護に携わる人々、さらには被害者参加弁護士として豊富な経験を有する弁護士に対し聴き取り調査を行った。今後もより多くの聴き取り調査を行う予定である。 本研究のこれまでの研究成果を論文「かくして裁判員制度は始まった―しかし、欠けていたのは何か?被告人の視点、被害者の視点、そしてジ ェンダーの視点」としてまとめることができ、その論文が掲載された本が全国紙の書評に取り上げられ、また研究代表者の執筆章についても言及があった。そのため、被告人の選択制の是非を中心とする、被告人の権利の観点から裁判員制度を再検証するこの研究についても社会的関心が高まることを期待している。 2022年度は、研究成果の社会還元として、学術会議公開シンポジウム「18歳と司法への市民参加」に本研究課題が共催というかたちで参加し、日ごろ意見を交わす機会の少ない高校生や高校教員と法学者が広く意見を交換する場を持つことができた。裁判員制度の今後の展開において若い世代や広く社会一般に向けた法教育、法学教育のあり方はどうあるべきかという新しい視点を学ぶことができたので、今後の本課題研究の発展に活かしたいと考える。 一方、国外調査に関しては、諸事情から2022年度も行うことができなかった。陪審制度等、市民が刑事裁判に参加する制度との比較研究は本研究においても重要な位置を占める。従って、2023年度は諸外国との比較法研究に力を入れて本研究課題を推進したい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、被告人の権利の観点から裁判員制度をどのように評価できるかについて、裁判員制度に様々な立場で関わる人々、具体的には被告人の弁護人や被害者支援に携わる弁護士、また更生保護従事者にインタヴューを行うことを内容としており、今後もその聴き取り調査を継続する。 また、2023年度は陪審制度をはじめとした刑事裁判における市民参加制度を有する諸外国においては、被告人の観点をどのように位置付けているかについて、比較法的研究を行うことを積極的に行う予定である。そこにおいては、海外調査だけでなく、諸外国において、市民参加型刑事裁判の研究やそれに関わる実務家等を招いたシンポジウムや研究会(対面、オンラインの両方を検討する)を開催することを研究手法として活用したいと考える。 また、2023年度も国内外の学会報告の機会を活用し、学会機関紙等に積極的に論文を投稿したいと考える。 さらに、2023年度は一般公開のシンポジウムや研究会を複数回行い、裁判員制度について、専門家以外の市民からも広く意見やコメントを得られるような試みを行い、研究成果の社会還元を積極的に行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に実施することを計画していた海外調査について、諸事情から実施できなかったため、当該助成金が生じた。2023年度においては、陪審制度を始めとした市民参加型刑事裁判を有する諸外国の制度についての比較法的研究やそのための調査や海外の研究者を交えたシンポジウムや研究会の実施を行い、助成金を執行する予定である。 また、国内調査として、裁判員裁判における弁護を受任した弁護士、更生保護従事者、被害者支援に携わる専門家に対して裁判員制度を被告人の権利の観点からどう評価するかについての聴き取り調査を進めていくことから、そのための国内旅費としても助成金を使用する。 さらに、2022年度は例年に比べると学会報告を多く行うことができなかったが、2023年度は、本研究のまとめとしての報告を学会報告や学会誌等への論文執筆というかたちで積極的に行う予定であることから、そのための費用としても助成金を使用する予定である。
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