研究課題/領域番号 |
21K01104
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
金山 直樹 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 名誉教授 (90211169)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | フランス民法典 / フランス革命 / 近代法 / 法典編纂 / モンテスキュー / ルソー / 旧体制 / 封建法 |
研究実績の概要 |
今年度、ようやく最初の課題たるポルタリス『民法典序論』を刊行することができた(訳・解説=金山直樹、日本評論社、2024年3月)。時間がかかったのは、出版社がなかなか決まらなかったことが大きいが、何よりも必要な作業量の膨大さに起因している。なぜなら、『民法典序論』の意味を明らかにするためには、項目ごとに、(i)旧法(革命前の法)、(ii)新法(革命期の法)、(iii)カンバセレス草案・ジャックミノ草案、(iv)民法典草案、(v)民法典正文を明らかにする必要があったからである。 本書において、(1)本文の訳は、日本語として読みやすく理解しやすい日本語を誇ることができる内容になっている。また、(2)訳注において、関係する法令をすべて引用している。しかも、(3)訳注および解説においては、モンテスキューおよびルソーとの思想的関係も明らかしている。(2)および(3)の作業は、本国フランスも含めて、これまで誰もしてこなかったことである。 本業績に特筆に値するのは、一つの近代法のあり方、すなわち大陸法における〈法典という近代〉を見事に描写している点である。法典編纂の起源において働いた力の正体を明らかにしているからである。民法典が「フランス社会の真の憲法」だとすれば、ここではその依って立つ基盤が露わにされる。さらに、近代的民法典として、フランス革命後の社会の範型を示している点においても、特筆に値する。フランス革命が王制・身分制・特権・封建制等を廃止した成果を民法典が受け継いで、人の平等、絶対的な所有権、契約の自由、男女を問わない均分相続、民事婚、そして離婚を認めた消息が明らかにされる。これは革命によって引き起こされた文明の転換点である。 以上、要するに、このような形で本書を刊行できたことの意義は計り知れないと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本書の刊行時期は大幅に遅れたが、内容はそれを補って余りあるものになっていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定よりも時期は遅れるが、2024年5月、法制史学会において、フランスからアルペラン氏を迎えて、一時帰国する私の他2名の報告者(石井三記、深谷格)を加えて、ミニシンポジウム「ポルタリス──宗教・哲学・立法」を開催する(5月25日(土)午後、於・大阪大学)。これは、ポルタリスの思想に多角的な光を当てる試みでる。 さらに、その前後において、様々な関連テーマについて、アルペラン氏と講演会を行う予定である。具体的には、神戸大学、同志社大学、金沢大学、北海道大学、早稲田大学において、講演を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
4月からパリの日本館の館長に就任し、それまでの研究計画が実行できなくなってしまった。 来年度は、費用のかかるアルペラン教授の招聘、私の一時帰国、講演会、関係者の旅費・謝金など、多額の支出が見込まれる。
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