研究実績の概要 |
研究初年度となる2021年度は、本研究の理論的基盤の構築をするべく、文献渉猟を中心とした研究を行い、本研究と関連する論文の執筆および口頭報告を行った。 第一に、哲学的因果関係論における介入主義に関連した基礎文献(James Woodward, Making Things Happen: A Theory of Caual Explanation, Oxford Universiy Press, 2003; Joseph Y. Halpern, Actual Causlity, MIT Press, 2019; Judea Pearl, Causality: Models, Reasoning and Inference, Cambridge University Press, 2000)の精査を行った。 第二に、介入主義に関連した基礎文献の精査を行う中で、本研究を遂行するためには、哲学的因果関係論における反事実条件説を参照した法的因果関係の検討を優先的に進めた方がよいと思われたため、反事実条件説に着目した理論を整理し、論文(「法的因果関係における反事実条件文の法理学的検討(一)」※(二・完)は2022年5月末に発行予定)を執筆した。 第三に、本研究と関連する口頭報告(①「AI社会における「心理的因果関係」:AIの判断は人間の行為の原因となりうるか」(理化学研究所革新知能統合研究センター国際シンポジウム:AI時代を生き抜く総合知としての身心の可能性)、②「法的因果関係の考え方とサイバネティック・アバター」(第5回CAS研究会「複数の『身体』と法的責任」))を行った。これらの口頭報告では、先端科学技術をめぐって法的因果関係論が提起する問題点を示し、本研究が有する発展性を示すことができた。
|