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2021 年度 実施状況報告書

パブリック・ヘルス・ローをめぐる日台米比較ー緊急時と平時の感染症対策と法の役割ー

研究課題

研究課題/領域番号 21K01117
研究機関神奈川大学

研究代表者

岩田 太  神奈川大学, 法学部, 教授 (60327864)

研究分担者 秋元 奈穂子  立教大学, 法学部, 准教授 (40517877)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワードパブリック・ヘルス・ロー / 日米台比較 / 感染症対策 / 法の役割 / 緊急時と平時
研究実績の概要

本研究の目的は,新型感染症・発症予防対策などの公衆衛生分野における法の役割に関する日本・台湾・合衆国の比較研究である.そのため,文献研究と実地調査を交えて,今般のコロナ蔓延時などの緊急事態下のみならず,人々の健康全般および発症予防を重視する平時の「パブリック・ヘルス・ロー」の視覚とその具体的な法制についても包括的に検討することである.従来十分注目されることのなかった,パブリック・ヘルス・ロー(公衆衛生と法)を包括的に検討し,未知の部分も多い新型感染症など緊急事態下の対応と,発症予防を中心とした新生児スクリーニングや予防接種などにおける平時のパブリック・ヘルス・ローの機能について,共通性と差異を検討する.
コロナ禍によって合衆国および台湾などでの実地調査は行えていないが,当初の目的である関連分野についての包括的な文献研究を中心に行ってきた.特に,今般のコロナ蔓延時などの緊急事態下のみならず,人々の健康全般および発症予防を重視する平時の「パブリック・ヘルス・ロー」の視覚とその具体的な法制についても包括的に検討してきた.またその際,従来十分注目されることのなかった,パブリック・ヘルス・ロー(Public Health Law,公衆衛生と法)を包括的に検討し,未知の部分も多い新型感染症など緊急事態下の対応と、発症予防を中心とした新生児スクリーニングや予防接種などにおける平時のパブリック・ヘルス・ローの機能について,共通性と差異について検討を始めた.第2,3年度においては,引き続き文献研究を継続するが,可能な範囲で,オンラインおよび実地調査によって専門家へのインタビューを織り交ぜ,「パブリック・ヘルス・ロー」の視覚を,日台米の3国比較により総合的に検討するもので,広く人々の健康をめぐる法機能を探る予定である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度は,以下(a-c)の3点について検討を始めた.(a)この分野の第一人者であるGeorgetownのGostinの一連の分析など多くの文献があるので,それらを網羅的に検討し,現段階での理論的な到達点及び課題と限界を検討してきた.(b)2001年の同時多発テロや炭疽菌テロを契機に,合衆国では従来の「PH」関連法の抜本的な見直しが始まったが,一つの到達点であるモデル法(Model State Emergency Health Powers Act)の内容的特徴とその後の展開の検討を行ってきた.これは,バイオ・テロ・新型感染症などの脅威に対する現行法の対応能力の向上と,現代の憲法体制に基づく人権保護,適正手続とのバランスを探る試みである.(c)緊急事態下を含めた感染症対策の法的整備に対する支援を行うCDCや,研究者・実務家で構成されたThe Network for Public Health Lawには,COVID-19への緊急事態対応を含め,「PH」活動で問題となる法的論点や裁判例が集積されている.それらを活用し現場においてどのような法的論点が実際に問題とされているかを分析してきた.例えば合衆国では,生活必須サービス以外の業種への休業命令,外出制限,集会禁止,さらに重症リスクの高い囚人の一時的釈放などめぐる多様かつ相当数の判決があり,それらの網羅的な検討を行ってきた.
その成果の一部として,代表者および分担者,台湾国立陽明交通大学のカンファレンスにおいて,コロナ禍の法制の課題などについて,日米の情況英語で報告した.Futoshi IWATA, "Coercion or voluntary Cooperation:Examining the COVID-19 Pandemic Regulations in Japan, Naoko AKIMOTO "Use of medical products in the public health emergency - comparison of US and Japanese systems" " 2021/12/2, The 25th Narional Technology Law onference , [School of Law , Natioal Yang Ming Chiao Tung University, Taiwan].

今後の研究の推進方策

第2-3(2022-23)年度においては、初年度の包括的な文献調査に基づき、平時における「PHL」に関する議論がどのような論点について行われているかを日台米との対比から分析する.先行研究の蓄積がある予防接種の問題などについても網羅的に検討する.加えて日本については,過去の感染症対策の問題点,特にハンセン病者への苛烈な対応,集団接種での注射針使い回しによるB型肝炎被害など負の歴史について,「PHL」の視覚からどのような問題と課題が見出せるのかを検討する.
最終年度は,所属研究会・学会において,早期に口頭報告を行い,専門家からフィードバックを受けた上で,論文執筆を行う.さらに海外においても発表の機会を探る.

次年度使用額が生じた理由

依然としてコロナ禍の影響が大きく,海外出張が機動的にできない状況であるため,文献研究およびオンラインでの意見聴取などを行ってきたことが最大の理由である.今後コロナ禍の状況改善によって海外調査なども行っていく予定である.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] 公衆衛生上の緊急事態における医薬品の規律-米国緊急使用許可の性格と制度的対応2022

    • 著者名/発表者名
      秋元 奈穂子
    • 雑誌名

      立教法学

      巻: 105号 ページ: 1-45

  • [雑誌論文] 新生児スクリーニングとコロナ禍の法と倫理2021

    • 著者名/発表者名
      岩田 太
    • 雑誌名

      神奈川大学法学研究所 Newsletter

      巻: №26 ページ: 3-4

  • [学会発表] Coercion or voluntary Cooperation:Examining the COVID-19 Pandemic Regulations in Japan2021

    • 著者名/発表者名
      岩田 太
    • 学会等名
      The 25th National Technology Law Conference
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Use of medical products in the public health emergency - comparison of US and Japanese systems2021

    • 著者名/発表者名
      秋元 奈穂子
    • 学会等名
      The 25th National Technology Law Conference
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2022-12-28  

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