新型コロナウイルス感染拡大の状況下におけるインド農村部の地方自治組織であるパンチャーヤトの役割とその法的根拠について検討することが本研究課題の目的であった。しかし研究の計画時とは異なりインドにおける新型コロナウイルスの感染拡大がみられ、厳格な出入国規制が敷かれたことから、当初予定していたアーンドラ・プラデーシュ州内の農村での聞き取り調査を行うことはかなわず、文献研究を中心に進めざるをえなかった。 2023年度は、12月にインド・ニューデリーを訪問し、インドにおける新型コロナウイルス感染防止対策に関わる法制度、およびこれに関連するものとして広くインド司法に関わる資料を収集した。 本研究課題を通じて収集し、検討した資料にもとづき、2022年度アジア法学会においてインドにおけるCOVID-19対策法制に関する研究発表を行った内容にももとづき、関西大学法学研究所研究草書第69冊『開発法学の再検討II』(2024年1月発行)に「インド・パンチャーヤトにかかわる法制度の近時の展開」と題する論考を寄稿した。 感染症拡大防止政策におけるパンチャーヤトの役割については十分に明らかにするには至らなかったが、同政策にかかわる連邦法および州法の現状や関連する訴訟の状況について検討することができた。また、これらの事項を通じてインド最高裁判所をはじめとする司法の現状についても知見を得ることができた。 今後は本研究課題を通じて収集した資料をもとに、継続してインドにおけるパンチャーヤト法制度およびこれを取り巻く司法の現状について検討する予定である。
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